サクラサイト被害事例


 

■ フロンティア21事件控訴審判決について

 

東京高等裁判所(第11民事部) 平成24年(ネ)第4873号平成25年6月19日判決(確定)

 

1.フロンティア21事件の概要ご紹介
サクラを使用していながら、これを秘して資金援助を口実に多数回メール交換をさせて多額の利用金額を支払わせたケースで、サイトの詐欺を認定して不法行為責任を認めた事案。1審の橫浜地方裁判所は、被害者である原告の請求を棄却しましたが、この敗訴判決が各地で、サクラサイト被害救済に努める消費者相談員や弁護士の目にふれることとなり、その影響の大きさから急きょ、当弁護団を含む全国201名の弁護士で控訴審を担当しました。
被害者である控訴人は、50才台の男性であり、サイトの運営業者は株式会社フロンティア21(以下「F21」)です。被害額は、2031万3000円であり、控訴審では、弁護士費用を含む全額の請求が認容されました。通常では、被害者側の過失も指摘され、過失相殺で請求額が減額されることもありうるところ、請求の全額認容という高裁の判断は、それだけ相手方業者の悪質性を重く見たものと思われます。
サイトの手口を簡単に紹介すると、被害者は、懸賞サイトに登録をしたところ、様々なメールが入るようになり、約2年以上にわたり、F21運営するサクラサイト「直撃ドキュン」、「直アドゲッチュー」、「ピュアラブロイヤル」、「ご近所直アドnet」において、様々なサクラによる資金援助を申し出る内容のメール等に騙され、利用ポイント購入・連絡先交換・暗号入力操作等の名目で、銀行振込、クレジットカード決済、電子マネー購入等の方法により、計2031万3000円をF21に支払わされたというものです。
他の被害事案と同様、出会いを求めるなどして自らサクラサイトに進んで登録したのではなく、勧誘メールでサクラサイトとは知らずに誘導されてメール交換を始めさせられた事案です。

 

2.本判決のポイント
サクラサイト事件の困難性は、①メールのやりとりについての立証が困難であること(サイト内メールが規約上2週間で閲覧できないとされており、正確なメールのやりとりを立証できる事案が非常に少ないこと)と ②メール交換相手がサクラであることの直接的な立証が容易でないこと、の2点にあります。
①について、本件の事案でも、サイト内メールは殆どなく、一部のサイトについてメールが届いたことを知らせるお知らせメールが一部残っているのみという状態でした。しかし、弁護団では、残っていたお知らせメールとサイトへの支払い記録、本人の記憶に基づき、できる限り詳しく事実を再現した陳述書を作成して提出したところ、裁判所は、陳述書に基づいた事実を認定しました。
また、お知らせメールすら全くないサイトでのやりとりについても、陳述書記載の内容のメールのやりとりがされたと認定されました。
②については、見も知らない一般利用者に対して指示に従えば資金援助をするという話があり得ない不自然な話でメール交換の相手方に実現する意思・能力がないことが明らかであること、メール交換相手の指示に合理性を見いだしがたいこと、高額な利用料を支払わせることによって利益を得るのがサイト運営業者であることから、メール交換相手は一般の会員ではなく、サイト運営業者が組織的に使用している者(サクラ)という、極めて常識的な認定をしました。

 

上記2点の事実認定を踏まえ、東京高裁は、サクラを使用して、かつサクラであることを秘して、嘘のメールを送信させて、これを信じさせ、利用料金として多額の金員を支払わせることは詐欺にあたり、不法行為責任を免れないとして、請求を棄却した原審判決を取り消し、被害者の請求額全額を不法行為による損害と認めました。
 
3.いわゆる潜入実験の位置づけについて

なお、本件事案では、弁護団では、被害者が被害にあったフロンティア21が運営するサイトの1つである「直アドゲッチュー」において、例えば、北海道に在住のAさんと、沖縄に在住するBさんというように、年齢や居住地域の異なる複数の利用者登録を行うという実験を実施しました(いわゆる潜入実験)。すると、同じ●●という名前のサクラから、同時に、北海道在住と登録したAさんに対しては札幌時計台での待ち合わせを求める内容のメールが、沖縄県在住と登録したBさんに対しては那覇市の国際通りでの待ち合わせを求める内容のメールが、同時に送付されたのです(実際の、潜入実験での登録内容や送付された内容のメールとは異なる例を挙げています)。そして、同様のサクラからのいろいろなパターンのメールが、短時間に、極めて大量に送信されました。「サイト運営業者がサクラを組織的に使用している」ことを示す相当有力な証拠が得られたのです。
そこで、弁護団では、この潜入実験の結果をまとめた報告書を東京高裁に提出しました。
しかし、東京高裁判決は、あくまでも上記①、②の各事実のみから「サイト運営業者がサクラを組織的に使用している」との事実を認定しました。潜入実験の結果は、「サイト運営業者がサクラを組織的に使用している」という事実認定を「裏付けるもの」との位置づけに止めたのです。このような東京高裁の判断は、極めて高く評価できます。
ところが、本件判決以降、サクラサイト運営業者等に対する損害賠償請求訴訟において、裁判所から「この事案では、潜入実験をしていないため、フロンティア21事件控訴審判決の認定は、本件には、そのままあてはまらない」との指摘を受けた、という報告を受けたことがあります。
しかし、このような指摘が本判決を正確に理解していない失当な指摘であることは、東京高裁の判決文を読めば明らかなことです。

 


2014/05/17更新