クレジット被害事例


 

■ 個別被害案件

【個別被害事件・その1】
着物の次々販売とクレジット

着物の次々販売が過量販売であり、公序良俗に反し無効であることを理由に、クレジット会社からの支払い請求を拒絶できるとしたもの(個別クレジット・過量販売・抗弁対抗)
東京地方裁判所平成23年(ワ)第41046号事件
平成26年1月29日判決言い渡し (確定)
(1)本件の概要
展示会販売の方法で呉服などを販売するA(補助参加人)から、約5年間にわたり、呉服を個別クレジットで次々に購入し(35回、代金合計4,000万円余)、当初は相続財産で、相続財産が底をついた後は事情を知らない息子の援助で支払いを続けてきたところ、事情に気づいた息子が、当弁護団に相談してきた案件です。
(2)購入者
購入者は無職の女性であり、収入はありません。着物は好きですが、自ら着付けはできず、脚の具合も悪かったことから、着物を着る機会といえば、Aの展示会に行くために、一緒に展示会に行く友人に着付けしてもらえる場合程度でした。
(3)Aによるクレジットの支払方法の指示
クレジットの支払い方法は、当初は一括払い、次に2回の分割払いとなり、次第に支払い回数が増えていき、途中からスキップ払い(初回の支払月を先送りにすること)となっています。支払回数、支払開始時期、毎月の支払額などは、すべてAの指示のとおりにしており、毎月の支払総額もAが把握していました。
(4)各クレジット会社との交渉の経緯
担当弁護士からのクレジット各社に対する過剰与信を疑う旨の通知に対し、多くのクレジット会社は、請求を打ち切ったり、放棄したり、少額の支払いでの和解となりましたが、B社とは折り合いがつかず、立替金請求訴訟を提起してきました。提訴案件は、購入時期の遅いもので、3件ありました。
(5)裁判での弁護団の主張
「B社の与信そのものが過剰与信であり公序良俗に反する」、「Aの販売が過量販売であり、売買契約は公序良俗に反して無効であり、そのことを抗弁としてB社に対抗できる」と主張しました。
(6)判決
判決では、過剰与信そのものの公序良俗違反は認めず、Aが、購入者の賦払金が購入者の支払い能力を超えること、購入者にとって呉服がその日常生活において通常必要とされる分量を既に著しく超えていることを知りながら、販売をしたものであるとして、それが社会的相当性を著しく逸脱する販売行為であると認められ、売買契約が公序良俗に反し無効と判断し、この売買契約の無効をもって信販会社への抗弁を認めました。

 

■ 集団被害事件

【集団被害事件・その1】
エレメント事件(絵画レンタル商法)

過去に化粧品や美顔器、リゾート会員権等をクレジットで購入した経験のある者に対し、「クレジット被害にあって料金を多額に取られ過ぎている人に対して、過払い分を返還する被害救済団体の者だ。あなたも対象者なので、会って返金したい。」と喫茶店等に呼び出し、絵画をホテルなどへレンタルすれば収入を得られるので、以前の被害を回復できる、その絵画はクレジットを利用して購入するが、クレジット代金は、絵画のレンタル料の中から払えるから持ち出しはない、などと説明し、クレジットを使って絵画を購入させた事件。

【集団被害事件・その2】
アクトジャパン事件 (モデル商法)

(1)事案の概要
アクトジャパンは、宝石や時計を高額に売りつける目的を隠して、原宿や表参道の路上で、20代の若い女性をターゲットに「雑誌の読者モデルになりませんか」などと声をかけて近づき、「専属の宣伝モデルになってほしい」「モデルになるには、商品を買ってもらわなければならない」「商品代金は、モデルの収入で楽に払っていける。ちゃんと払えるように、仕事を紹介するから」などと言って、高額なアクセサリーを購入させ、さらには化粧品の代理店契約を勧めて、高額な加盟金を支払わせるなどしていたものです。
アクトジャパンは、当初は、A社と加盟店契約をしていましたが、苦情が多く、解約が相次いだことから加盟店契約を解除され、その後、B社、C社、D社と提携するようになりました。借入手続は、アクトジャパンの従業員主導で行い、上記提携与信業者から被害者本人の口座にお金が振り込まれると、そのまま、アクトジャパンの口座に送金するよう指示していました。また、警察の捜査が入ったころからは、上記提携与信業者から借り入れるのではなく、従業員が消費者金融まで連れて行って借入をさせ、借入金をそのままアクトジャパンに支払わせるケースが散見されるようになっていました。
(2)弁護団の結成
報道では、被害者は全国に約470人(被害総額約2億8000万円)とのことでしたが、当弁護団では、平成18年6月ころから相談を受けるようになり、延べ56名から相談を受け、うち31名については、後述のとおり、損害賠償請求訴訟を提起しました。
(3)刑事事件
平成18年3月ころから管轄の原宿警察署が捜査に入り、平成18年9月8日、代表者外9名が特定商取引違反(不実告知)で逮捕されました。うち5名については略式裁判、残り4名(会社、代表者、実質的統括者ら)は起訴され、公判手続が行われました。
4名とも、全面的に自白し、特定商取引法違反の罪(不実告知)を認め、平成19年2月16日、アクトジャパンには罰金200万円、代表者には懲役2年6月・執行猶予5年、実質的統括者の男性には懲役2年・執行猶予5年、元店長の男性には懲役1年6月・執行猶予4年の判決が言い渡されました。
(4)与信業者との和解
与信業者との間では、刑事事件に発展したこと、アクトジャパンと与信業者とを結びつけた仲介業者が、与信業者に対し、残金(約2億円)を立て替えて支払ったこともあり、最終的には、全ての与信業者との間で債権放棄の和解が成立しました。
(5)訴訟提起
平成18年11月(平成19年4月に追加提訴)、アクトジャパン、代表者、その元妻(逮捕直前に離婚)、業務全般を実質的に統括していた者や役員、店長、その他被害者らを直接勧誘した従業員ら合計18名に対し、訴訟提起しました(東京地裁平成18年(ワ)第25031号、平成19年(ワ)第8801号)。
被害者の原告は、追加提訴を含めて、計31名です。アクトジャパンや与信業者に支払った既払金に加えて、慰謝料と弁護士費用を請求したほか、消費者金融から借入をさせられた被害者で、消費者金融への支払が残っている被害者については、抗弁を対抗することができないため、既払金だけではなく、消費者金融に対する残金も請求しました。
早い段階で、従業員1名と和解が成立し、一部を回収するとともに、代理人がついた役員1名とも和解が成立し、被害額の一部を回収することができました。
その余の従業員らについては、いずれも法廷に出席しなかったため、ほぼ原告らの請求どおりの内容で判決を取得しました。
そして、会社や代表者、実質的統括者や一部の従業員についても、平成19年12月17日、和解が成立し、その後、解決金の支払いを受けました。
(6)弁護団による解決
最終的に、当弁護団で依頼を受けた方については、クレジットの残債については債権放棄の和解により支払義務を免除され、既払金や借入金については訴訟提起によって全額回収し、加えて慰謝料についても、若干ではありますが、支払を受けることができました。


2014/05/14更新



サクラサイト被害事例


 

■ フロンティア21事件控訴審判決について

 

東京高等裁判所(第11民事部) 平成24年(ネ)第4873号平成25年6月19日判決(確定)

 

1.フロンティア21事件の概要ご紹介
サクラを使用していながら、これを秘して資金援助を口実に多数回メール交換をさせて多額の利用金額を支払わせたケースで、サイトの詐欺を認定して不法行為責任を認めた事案。1審の橫浜地方裁判所は、被害者である原告の請求を棄却しましたが、この敗訴判決が各地で、サクラサイト被害救済に努める消費者相談員や弁護士の目にふれることとなり、その影響の大きさから急きょ、当弁護団を含む全国201名の弁護士で控訴審を担当しました。
被害者である控訴人は、50才台の男性であり、サイトの運営業者は株式会社フロンティア21(以下「F21」)です。被害額は、2031万3000円であり、控訴審では、弁護士費用を含む全額の請求が認容されました。通常では、被害者側の過失も指摘され、過失相殺で請求額が減額されることもありうるところ、請求の全額認容という高裁の判断は、それだけ相手方業者の悪質性を重く見たものと思われます。
サイトの手口を簡単に紹介すると、被害者は、懸賞サイトに登録をしたところ、様々なメールが入るようになり、約2年以上にわたり、F21運営するサクラサイト「直撃ドキュン」、「直アドゲッチュー」、「ピュアラブロイヤル」、「ご近所直アドnet」において、様々なサクラによる資金援助を申し出る内容のメール等に騙され、利用ポイント購入・連絡先交換・暗号入力操作等の名目で、銀行振込、クレジットカード決済、電子マネー購入等の方法により、計2031万3000円をF21に支払わされたというものです。
他の被害事案と同様、出会いを求めるなどして自らサクラサイトに進んで登録したのではなく、勧誘メールでサクラサイトとは知らずに誘導されてメール交換を始めさせられた事案です。

 

2.本判決のポイント
サクラサイト事件の困難性は、①メールのやりとりについての立証が困難であること(サイト内メールが規約上2週間で閲覧できないとされており、正確なメールのやりとりを立証できる事案が非常に少ないこと)と ②メール交換相手がサクラであることの直接的な立証が容易でないこと、の2点にあります。
①について、本件の事案でも、サイト内メールは殆どなく、一部のサイトについてメールが届いたことを知らせるお知らせメールが一部残っているのみという状態でした。しかし、弁護団では、残っていたお知らせメールとサイトへの支払い記録、本人の記憶に基づき、できる限り詳しく事実を再現した陳述書を作成して提出したところ、裁判所は、陳述書に基づいた事実を認定しました。
また、お知らせメールすら全くないサイトでのやりとりについても、陳述書記載の内容のメールのやりとりがされたと認定されました。
②については、見も知らない一般利用者に対して指示に従えば資金援助をするという話があり得ない不自然な話でメール交換の相手方に実現する意思・能力がないことが明らかであること、メール交換相手の指示に合理性を見いだしがたいこと、高額な利用料を支払わせることによって利益を得るのがサイト運営業者であることから、メール交換相手は一般の会員ではなく、サイト運営業者が組織的に使用している者(サクラ)という、極めて常識的な認定をしました。

 

上記2点の事実認定を踏まえ、東京高裁は、サクラを使用して、かつサクラであることを秘して、嘘のメールを送信させて、これを信じさせ、利用料金として多額の金員を支払わせることは詐欺にあたり、不法行為責任を免れないとして、請求を棄却した原審判決を取り消し、被害者の請求額全額を不法行為による損害と認めました。
 
3.いわゆる潜入実験の位置づけについて

なお、本件事案では、弁護団では、被害者が被害にあったフロンティア21が運営するサイトの1つである「直アドゲッチュー」において、例えば、北海道に在住のAさんと、沖縄に在住するBさんというように、年齢や居住地域の異なる複数の利用者登録を行うという実験を実施しました(いわゆる潜入実験)。すると、同じ●●という名前のサクラから、同時に、北海道在住と登録したAさんに対しては札幌時計台での待ち合わせを求める内容のメールが、沖縄県在住と登録したBさんに対しては那覇市の国際通りでの待ち合わせを求める内容のメールが、同時に送付されたのです(実際の、潜入実験での登録内容や送付された内容のメールとは異なる例を挙げています)。そして、同様のサクラからのいろいろなパターンのメールが、短時間に、極めて大量に送信されました。「サイト運営業者がサクラを組織的に使用している」ことを示す相当有力な証拠が得られたのです。
そこで、弁護団では、この潜入実験の結果をまとめた報告書を東京高裁に提出しました。
しかし、東京高裁判決は、あくまでも上記①、②の各事実のみから「サイト運営業者がサクラを組織的に使用している」との事実を認定しました。潜入実験の結果は、「サイト運営業者がサクラを組織的に使用している」という事実認定を「裏付けるもの」との位置づけに止めたのです。このような東京高裁の判断は、極めて高く評価できます。
ところが、本件判決以降、サクラサイト運営業者等に対する損害賠償請求訴訟において、裁判所から「この事案では、潜入実験をしていないため、フロンティア21事件控訴審判決の認定は、本件には、そのままあてはまらない」との指摘を受けた、という報告を受けたことがあります。
しかし、このような指摘が本判決を正確に理解していない失当な指摘であることは、東京高裁の判決文を読めば明らかなことです。

 


2014/05/17更新