情報商材被害
被害の説明
概要
「情報商材」とは、インターネットの通信販売等で、副業、投資やギャンブル等で高額収入を得るためのノウハウ等と称して販売されている情報のことをいいます(独立行政法人国民生活センター「簡単に高額収入を得られるという副業や投資の儲け話に注意!-インターネット等で取引される情報商材のトラブルが急増-」平成30年8月2日付け。https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20180802_1.html)
具体的には、「誰でも簡単に確実に億万長者になれる方法」、「1日数分の作業で月収●百万円を達成できる方法」などのお金を稼ぐ手法を教えるといった勧誘がライン・SNS・インターネット上で行われます。
実際に情報商材を購入して、配信される動画を閲覧したり、メールマガジン、PDFファイル等を読んだり、購入したソフトを起動しても、勧誘されたような収入を得ることができず、全く無価値な商材を購入させられる被害があります。
情報商材被害の特徴
情報商材の特徴として、インターネット上の勧誘ページをみると、「月収●万円達成できる」、「誰でも億万長者になれる」などと記載されていますが、具体的にどのような手法によりお金を稼ぐことができるかは記載されていませんので、購入するまで商品の内容がわかりません。
また、情報商材の中には、億万長者になったとされる人物(広告塔)が登場し、その広告塔が複数本の動画に出演して、情報商材を購入したとされる人物にインタビューをしたり、自分の預金通帳の残高が高額となっている画像を見せるなどして、当該情報商材を購入すれば、広告塔の人物と同じく億万長者になれると勧誘をしてくることがあります。広告塔とされる人物は偽名で架空の人物であることが多いです。
さらに、情報商材の勧誘では、「誰でも」、「簡単な作業で」、「確実に儲かる」などと断定的な表現を用いて勧誘がなされることがあります。
当弁護団では、2018年から情報商材被害の救済に取り組んでいます。
各機関の公表資料等
- 「簡単に高額収入を得られるという副業や投資の儲け話に注意!-インターネット等で取引される情報商材のトラブルが急増-」国民生活センター・平成30年8月2日
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20180802_1.html
- 「【若者向け注意喚起シリーズ<NO2>】情報商材や暗号資産(仮想通貨)のトラブル―「もうかる」はずが、残ったのは借金」国民生活センター・令和3年6月3日公表
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20210603_1.html
- 「『簡単に儲かる』という情報商材を購入し、有料のサポートプランを契約したが解約したい」国民生活センター・令和3年7月30日公表
https://www.kokusen.go.jp/t_box/data/t_box-faq_qa2021_08.html
法律的な説明
情報商材詐欺と不法行為
情報商材は、上記のとおり、月収●万円を達成できる方法とか、誰でも簡単に確実に稼ぐことができる等と勧誘して、商品の内容を把握できない購入者に無価値な商品を販売するという特徴があります。
そのため、販売業者の説明内容は、虚偽または著しく誇大な効果を強調して説明したものであることから、販売業者の勧誘行為は違法であり不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求を主張することが考えられます。
裁判例の中には、販売業者の広告及び勧誘動画は、商品の性能について、著しく事実に相違する表示をするものと認められることから、特商法12条において禁止されている誇大広告に該当するものであり、刑事罰の対象にもなるものであるから、当該広告及び当該勧誘動画を利用した商品の勧誘は、不法行為法上違法と評価すべきであるとして、不法行為に基づく損害賠償請求を認めたものがあります(東京地判令和元年7月3日 Westlaw Japan 文献番号2019WLJPCA07038002)。
情報商材詐欺と消費者契約法による取消し
また、情報商材の勧誘は、勧誘内容に合致しない無価値な商品を販売したり、リスクがあるにもかかわらず、リスクがないかのような勧誘をしていた場合には、消費者契約法の不実告知(第4条1項1号)、断定的判断の提供(第4条1項2号)、不利益事実の不告知(第4条2項本文)による取消しを主張することが考えられます。
解決方法
情報商材詐欺の解決方法は、情報商材を購入した時の決済手段により変わってきます。
- クレジットカード決済や電子マネー決済(ネットライドキャッシュ、セキュリティマネー、ビットキャッシュ、ウェブマネーなど)の場合には、多くのケースで、決済代行業者がその決済に関与していますので、決済代行業者に対して販売業者の情報開示を求めることになります。また、決済代行業者を介して販売業者に対して返金を求めていきます。
他方、販売業者が指定した口座に振り込む方法で情報商材購入代金等を支払っている場合は、多くのケース(詐欺と評価できるケース)で当該振込先口座を凍結するとともに、口座名義人(情報商材販売業者に限りません)に対しても返金を求めることになります。
- 以上のような解決方法をとるうえでは、サイトの利用履歴(いつ、いくら、どのような方法で支払ったか等)を明らかにする必要がありますので、①クレジットカード利用明細、②電子マネーの証票、③銀行の振込票などの資料を準備していただくことになります。このうち、②電子マネーの証票を破棄されてしまっている場合は、決済代行業者や電子マネー発行会社に対する照会などにより、取引内容を明らかにしていく必要があります。
また、証拠の確保という観点では、被害に遭っているかもしれないと思った時点で速やかにサイト内のメッセージを古いものからスクリーンショットやカメラで撮影して保全していただくことが重要です。これは、情報商材の販売業者は短期間で情報商材の販売サイトを閉鎖してしまうことが多いためです。
- 交渉による解決が困難な場合には、訴訟を検討することになります。
また、訴訟を提起する前に「仮差押え」という裁判手続を利用し、販売業者の財産(預金や債権など)を仮に差押えすることもあります(訴訟をしている間に、販売業者の財産が散逸し、勝訴判決を得ても回収ができなくなってしまうことを防ぐために行う手続です。)。
- 解決方法や解決までの大まかな流れは、上記のとおりですが、決済代行業者を介しても販売業者と連絡が取れないこともあります(決済代行業者が販売業者との加盟店契約を解除してしまっているような場合)。
このような場合には、被害回復のために、決済代行業者に対する責任追及を検討することもあります。
裁判例
熱海簡裁(神奈川弁護団)
■熱海簡易裁判所平成31年2月20日判決(平成30年(ハ)第78号)
「被告は、(情報商材A)は、リスクを負わずに誰でも働かずに億万長者になれる錬金術だとし、(情報商材A)の必要期間を短縮するのが(情報商材B)であり、(情報商材A)により億万長者になるのを確実に実践するものが(情報商材C)であると宣伝、説明して勧誘するものであり、原告は、リスクを負わずに誰でも働かずに億万長者になれる錬金術だと信じて本件3契約を締結したものである。
しかしながら、被告の説明するように億万長者が年収1億円以上の定期的収入を得ることができる者であるとして、リスクを負わずに誰でも働かずに確実に億万長者になることができるとは到底考え難く、多くの安定的収入を得るためには相応の活動をし、リスクを負うのが通常であり、複合的な要因によって結果的に億万長者となる者も存在するというにすぎない。したがって、被告が本件3契約の締結の勧誘にあたって原告に提供したリスクを負わずに誰にでも働かずに確実に億万長者になれるという情報は、真実ではなく、実現が不確実な事項に関して、断定的な判断を提供するものであり、当該提供された断定的判断の内容が確実であると誤信を生じさせるものである。
そうすると、本件3契約は、いずれも被告の提供した断定的判断による原告の誤信に基づいて締結されたものであるから、原告の被告に対する法4条1項2号により取り消す旨の意思表示は有効であると認められる。そして、平成28年8月27日到達の文書により原告は被告に対し、本件3契約にかかる取消及び代金の返金を求める意思表示をしたことが認められる。
よって、原告の被告に対する、支払済みの本件3契約の代金として合計84万7292円の返還を求める請求には理由がある。」
■東京地判令和元年7月3日(Westlaw Japan 文献番号2019WLJPCA07038002)
「本件広告は、『参加者にわずか3ヶ月で16億円を稼がせた秘密の手続きで日本人全員を億万長者にする』、『日本初公開の最新テクノロジーを利用し18歳の高校生から90歳のおじいちゃんまで日給3万円~30万円の不労所得を手に入れたビジネス初心者が続出中』…といった文言からすると、本件DVDの性能について、本件DVDを購入することにより、日本初公開の最新テクノロジーを利用することによって、確実に多額の利益を得ることができるものであることを表示するものであると認められる。
他方、本件DVDの内容は、主に本件システムの内容を紹介するものであり(…)、確実に多額の利益を得ることができる方法が紹介されているわけではなく、本件DVDを購入することによって初めて購入することができる(情報商材P)の購入により利用することができる本件システムも、単に、投資家が購入するとおりに自らの資金を外国通貨取引に投資するというものであって(…)、日本初の最新テクノロジーを利用するものではなく、確実に多額の利益を得ることができるものではない。
そうすると、本件広告は、本件DVDという性能について著しく事実に相違する表示をするものと認められ、特商法12条によって禁止されている誇大広告に該当する。」
「また、本件勧誘動画は、その広告内容が、本件システムが日本初公開となるシステムであり、人工知能が本件商品購入者の代わりにものすごいスピードで資金を増殖させてくれる驚愕のシステムであって、初期設定さえ済ませてしまえば、本件商品購入者の代わりに24時間365日、資金を増やし続けてくれるといったものである(…)ことからすると、(情報商材P)の性能について、(情報商材P)を購入することにより、日本初公開のシステムを利用することによって、自動的に多額の利益を得ることができるものであることを表示するものであると認められる。しかし、(情報商材P)により利用することができる本件システムは、単に、投資家が購入する通りに自らの資金を外国通貨取引に投資するというものであって(…)、日本初公開のシステムを利用するものではなく、自動的に多額の利益を得ることができるものではないことは、前記…のとおりである。
そうすると、本件勧誘動画は、(情報商材P)という商品の性能について、著しく事実に相違する表示をする広告であると認められ、特商法12条において禁止されている誇大広告に該当する。」
「以上に検討したように、本件広告及び本件勧誘動画は、特商法12条で禁止されている誇大広告に該当するものであり、刑事罰の対象にもなるものであるから、本件広告及び本件勧誘動画を利用した本件商品の勧誘は、不法行為法上違法と評価すべきものである。」
お知らせ
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弁護士費用
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