リース被害

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被害の説明

リースとは

 一般的にリース(ファイナンス・リース)とは、顧客が、ある物件(例えばOA機器)の導入を希望する場合に、リース会社が顧客に代わってその物件を販売店(サプライヤー)から購入した上、その物件を顧客に賃貸し、顧客は、一定の期間(例えば5年間)、リース会社に対してリース料を支払うような契約をいいます。リース会社が顧客に物件を賃貸する形をとっていますが、実質的には金融であり、経済的にはいわゆるクレジットに極めて近いものといえます。
 なお、消費者がこのようなリースを利用することはほとんどなく、リースの顧客は基本的には事業者です。

 当弁護団では、2006年からリース被害の救済に取り組んでいます。

どのような被害か

 もちろん、リースの仕組みそのものが悪いわけではありません。当弁護団が問題としているのは、上記のようなリースのうち、販売店が顧客に対して自社の商品やサービスを勧誘する際に、提携関係(クレジットにおける加盟店契約のようなもの)のあるリース会社のリースを利用することをあっせんし、リースの契約手続も販売店が代行し、リース会社は顧客とは一度も対面せず、電話確認のみを行うような取引です。このようなリースは「提携リース」とか「リース提携販売」などと呼ばれています。
 提携リースにおいては、リースの勧誘を販売店に委ねる構造が悪用され、販売店の不当な勧誘により顧客が害を被る事例が多数発生し、社会問題となりました。当初は「今お使いの電話機は間もなく使えなくなる。」とか「電話機を交換すれば電話料金が安くなる。」などと顧客を騙して電話機(ビジネスホン)のリースをさせるという被害が多かったため、提携リースは「電話機リース」とも呼ばれていましたが、もちろん被害が発生している物件は電話機に限りません(電話機以外では、複合機、サーバー、コンピュータ用セキュリティ機器等のOA機器・IT機器やホームページ作成サービス等を対象としたリースに被害が多く見られます。)。
 販売店の不当な勧誘の類型としては、上記のような物件に関する虚偽説明のほか、「当社が月額リース料と同額を毎月振り込むので実質負担はない。」などと勧誘するキャッシュバック勧誘、顧客の事業規模にそぐわない高額、高性能な機器を導入させる過量販売・過剰販売、「リースを組み換えればリース料が安くなる」などと勧誘して次々にリースを組ませる次々販売等があります。
 当弁護団では、このような提携リースによる被害を「リース被害」と呼んで、2006年から被害者救済に取り組んできました。
 なお、リース事業者の業界団体である公益社団法人リース事業協会も、これを「小口リース取引問題」と呼んで、被害の防止等に取り組んでいます。
 その一環として、同協会は、平成27年1月21日、「小口リース取引に係る自主規制規則」を策定し、会員であるリース会社に対し、顧客への電話確認に際しては、「サプライヤー等と顧客との間の取引行為の状況」を確認するよう求めるなどしています。

解決方法

販売店に対する損害賠償

 販売店による不当な勧誘は不法行為(民法709条)に当たることが多いと考えられますので、その場合、顧客は販売店に対して損害賠償請求をすることができます。リース料相当額を損害として賠償させることができれば、それで毎月のリース料を支払っていくか、あるいはリース料を一括払いしてリースを解約することができます。
 もっとも、悪質な販売店は契約後に所在がわからなくなったり、倒産してしまうことも稀ではありませんので、そのような場合は、法律的に損害賠償請求権があるからとって絵に描いた餅であり、実際の被害回復は困難です。

リース会社に対するクーリング・オフ

 そこで、リース会社に対して直接どのようなことがいえるかが問題となります。
 まず、「リース被害」のほとんどは訪問販売によるものですから、特定商取引法に基づくクーリング・オフ(同法9条)をすることが考えられます。これはいわば無条件解除ですので、販売店の不当な勧誘についてリース会社に何の落ち度がなくとも、顧客はクーリング・オフの権利を行使することができます。
 この場合、問題となるのは、「リース被害」の被害者の多くは事業者であるところ、特定商取引法は基本的に消費者のための法律であり、「営業として若しくは営業のため」の契約は適用除外とされていることです(同法26条1項1号)。
 しかしながら、この適用除外は比較的柔軟に解釈されており、特定商取引法に関する通達は、「例えば、一見事業者名で契約を行っていても、購入商品や役務が、事業用というよりも主として個人用・家庭用に使用するためのものであった場合は、原則として本法は適用される。特に実質的に廃業していたり、事業実態がほとんどない零細事業者の場合には、本法が適用される可能性が高い。」としています。
 さらに裁判例では、適用除外となるのは「事業者であり、かつ、これらの者にとって当該契約の目的、内容が営業のためのものである場合」とされ、事業規模、リース物件の使用状況、リース物件の性質・機能と当該事業との関連性・必要性などを考慮要素として、具体的・実質的に判断されています。
 したがって、事業者であるからといって、直ちに特定商取引法に基づくクーリング・オフを諦める必要はありません。
 なお、クーリング・オフは、所定の事項が記載された書面を受領してから8日を経過する前に権利行使(通知の発送)をする必要がありますが、書面に記載不備があった場合には8日のカウントは開始しません。この場合、契約締結から8日が経過していてもクーリング・オフをすることができますので、書面の記載事項のチェックが必要です。

リース会社に対する損害賠償/支払拒絶

 もっとも、事業規模やリース物件の性質等に照らして、「営業のため」の契約といわざるを得ない場合も少なくありません。
 その場合、リース会社との関係は、取引に関する一般法である民法によって規律されることになりますが、過失責任主義等を基本原理とする民法の世界では、販売店の不当な勧誘についてリース会社に落ち度があったかどうかが問題となります。
 この問題に関する嚆矢が大阪地判平成24年7月27日(判タ1398号159頁)です。同判決は、「リース会社と提携販売店は、…利害が対立する関係ばかりではなく、リース契約締結にむけて密接な協力関係にあり、優良な顧客とのリース契約が増加すると、双方の利益も増加する関係にもあるといえることから、提携販売店とリース会社との関係、提携販売店のリース契約締結手続への関与の内容及び程度、提携販売店の不法行為についてのリース会社の認識又は認識可能性の有無及び程度等に照らし、リース会社が提携販売店の違法行為を知り、又は知り得たにもかかわらず漫然と顧客とリース契約を締結したというような特段の事情が認められる場合には、リース会社は、提携販売店に違法な営業活動がないかを調査し、必要に応じて、両者の法律関係及び経済的影響力に応じた指導・監督をすべき注意義務があったものとして、不法行為責任を負うと解するのが相当である。」と判示し、リース会社の不法行為責任を認めました。また、同判決は、このような場合、リース会社が顧客に未払いリース料を請求することは信義則上許されないともしています。

最近の裁判例〜大阪高判令和3年2月16日〜

 さらに、近時の大阪高判令和3年2月16日(判例時報2512号17頁)は、前記のとおり公益社団法人リース事業協会が「小口リース取引に係る自主規制規則」を策定したことを踏まえて次のように判示し、リース会社の顧客に対する請求を一部制限しました。
 「本件自主規制規則は、リース事業協会の内部規制にすぎないものではあるが、サプライヤーの販売方法に対する苦情その他の小口リース取引に係る問題がリースの社会的信用を損ねるものであるとの認識のもとに、これを改善するため、リース会社が遵守すべき業界のルールを対外的に公表したものとして、リース会社とサプライヤーの顧客との間の私法上の権利義務の内容を考えるに当たっても参照されるべきである。これらのことを勘案すると、サプライヤーと業務提携して小口リース取引を行うリース会社は、少なくとも本件自主規制規則に定める程度の各施策を講じることを通じて、サプライヤーの顧客に対する不当な勧誘等を防止し、顧客を保護することが私法上も期待されており、これを懈怠したことにより、顧客に不利益が生じたと認めるべき具体的事情が存在する場合には、リース契約が有効に成立している場合においても、リース会社の顧客に対するリース料の請求が信義則上制限される場合があるというべきである。」「前記した本件自主規制規則制定の経緯に照らすと、被控訴人は、平成27年1月の時点で、本件リース契約のような小口リース取引について問題のある取引が発生していたこと、これを防止するために本件自主規制規則が設けられたことを認識していたというべきであるから、具体的にA社に関する苦情やソフトウェアのリースに関する行政通達が存在しない場合でも、本件自主規制規則に定める程度の各施策を講じることにより、サプライヤーの顧客に対する不当な勧誘等を防止し、顧客を保護すべき信義則上の義務があったというべきである。」
 前掲大阪地判平成24年7月27日は、「リース会社が提携販売店の違法行為を知り、又は知り得たにもかかわらず漫然と顧客とリース契約を締結したというような特段の事情が認められる場合」にはじめてリース会社は販売店を指導監督する義務を負う旨判示していたところ、この大阪高判令和3年2月16日は、販売店の違法行為に関する具体的な兆候がなくても、リース会社は自主規制規則に定められている程度の電話確認は積極的に行って不当な勧誘等を防止すべき義務を負っており、これを怠った落ち度があった場合には責任を負う(リース料の請求が制限される)と判示したものと解され、画期的と評価することができます。

裁判例

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荻窪法律事務所
大迫 惠美子

※電話での被害相談は行っていません。

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