サクラサイト・占いサイト被害

目次

被害の説明

サクラサイト被害

 「サクラサイト」とは、サイト業者に雇われた「サクラ」が異性、タレント、社長、弁護士、占い師などのキャラクターになりすまして、消費者の様々な気持ちを利用し、サイトに誘導し、メール交換等の有料サービスを利用させ、その度に支払いを続けさせるサイトを指します(独立行政法人国民生活センターの平成24年4月19日付け報道発表資料)。

 当弁護団では、2011年(平成23年)からサクラサイト被害の救済に取り組んでいます。

 以下に、事例を紹介します。

【事例1】別のSNS サイトから誘導

 別の無料 SNS サイトで、自分の好きなタレントのページにリンクを張って利用していた。すると、そのタレントから直接メッセージが届き、メール交換をするために、別のサイトに誘導された。1 年以上、同じ URL でやり取りを続けているが、途中でサイトの名前や振込先が変更されたが、タレントとはそのまま、やり取りをし続けることができた。タレントは事務所に内緒でメール交換しているので、サイト内でなければ続けられないと言う。すでにサイト業者に260 万円も支払ってしまった。

【事例2】突然の賠償金請求

 他のゲームサイト内の掲示板に書き込んであったURL をクリックしたら、出会い系サイトに誘導された。名前や住所等をサイトに伝えて登録し、最初は無料ポイントを使って、1 人の女性とメール交換を開始した。その後、無料ポイントはすぐになくなってしまったので、仕方なく、現金でポイントを購入してやり取りを続け、合計約 18 万円を支払った。何度も会う約束をして、待ち合わせ場所に行ったが、相手とは一度も会えなかった。すると、相手から「会えなかったので、使ったポイント代と精神的被害の賠償金として 250 万円を支払ってほしい。払わなければ訴える」 というメールが届いた。サイトに相談すると、「250 万円をサイトにいったん支払えば、1 週間、相手とメール交換できるようにするので、相手と交渉するように」と言われた。これ以上、支払うことはできないが、個人情報を伝えてしまっているので、訴えられないかと不安だ。

【事例3】悩みを聞くアルバイトのはずが・・

 携帯電話に知らない人からメールが届くようになった。最初は無視していたが、「自分の悩みを聞いてほしい」というメールに返信すると、お礼にお金を渡すというメールがたくさん届いた。アルバイト感覚でできるならと思い、やり取りを始めた。その後、お金を受け取 るために必要と言われ、さまざまな手続き費用を請求され、後でお金をもらえると信じて、支払った。1 回の決済が 5000 円、1万円と少額であったが、気づくと、たった 4 日間で、クレジット カード、電子マネー、現金振込で合計約 350 万円を支払ってしまった。

【事例4】有名タレントの相談に乗るために続けたやり取り

 携帯電話に知らないアドレスから「連絡がほしい」というメールが届いた。知り合いがメールアドレスを変更したのだと思い、メール内のURL をクリックしたところ、知らないサイトに会員として招待された。その後、有名タレント事務所の取締役や所属タレント、マネジャー等からメールが届き、相談に乗ってほしいと言うのでメッセージのやり取りを始めた。最初は半信半疑だったが、真実味のある内容で、やり取りを続けるうちに信じてしまった。しかし、途中で有料だと気づき、相手に相談したところ、「お金を口座に振り込む」等と言われたので、口座番号を教えたが入金はなかった。その後も、振り込むために信用チェックが必要等と言われ、ポイントを何度も購入し続けた。初めはクレジットカードで支払っていたが、限度額がいっぱいになったので、 電子マネーや現金振込で支払った。やり取りは 1 日中続き、精神的にも肉体的にも限界で、冷静な判断力はなかったと思う。それでもおかしいとは思ったが、「誰にも言わないように」「やり取りの記録は削除するように」などと指示されていたので、周りの人にも相談できなかった。証拠 もほとんどない。生活にも困るようになり、もうカード会社に支払うお金がない。

【事例5】合計 8000 万円を支払い、心理的に不安定になり入院

 40 歳代の子どもが、メール相手と協力してサイトにお金を振り込むと、「みんなが幸せになれる」、「振り込んだお金も返ってくる」等と信じ、何度も振り込みを続けた結果、合計約 8000 万円 もの大金を振り込んでしまったようだ。本人の貯金だけでなく、親である自分の老後の蓄え(約 6000 万円)も使い果たしてしまった。子どもはいまだにサイトを信じているようで「振り込みを続けなければ」と携帯電話を常に離そうとせず、大声で暴れるので入院させた。

【事例6】高齢者が投資だと思いポイント購入

  1 年前、パソコンに届いたメールをきっかけに、高齢の父が出会い系サイトに登録し、そのサ イトで利用可能なポイントを購入し続けてしまった。別居している家族が気づいた時には、約 6300 万円も支払ってしまっていた。「ポイントは換金できる」、「ポイントをためると格が上がり 特典がある」、「振り込みをやめると、今までのポイントが無駄になる」等と言われ、投資のようなものだと信じていたと言う。

【事例7】陰陽師に呪文を 50 回送信

 スポーツ新聞でみた婚活サイトに登録したところ、姉妹サイトである出会い系サイトにも登録したことになったので、そのサイトでメール交換を開始した。いろいろな人からメールが届いたが、その中に陰陽師を名乗る人がいた。その人に「悪霊がついている」、「取り除くための呪文を教えるので、その呪文をメールで 50 回送るように」等と言われるうちに怖くなり、有料ポイントを購入し、1 通約 700 円のメールを送り続けた。その後、タレントや 300 万円を渡したいという人からメールが届いた。やり取りを続けるために、合計約 600 万円を支払ってしまったので、貯蓄もなくなり、弁護士等に依頼するお金もない。なんとか、約束通り、300 万円を受け取りたい。

【事例 8】コミュニケーションアプリからの誘導

 スマートフォンで、電話やメッセージ交換が無料で利用できる“コミュニケーションアプリ” を利用している。ある日、そのアプリに、「連絡がほしい」というメッセージが届いた。このアプリに連絡できるのは、自分の携帯電話番号かアプリ登録時に発行される ID を知っている人だけだ と思っていたので、返信した。すると「自分はマネジャーをしている。担当しているタレントの相談に乗ってほしい。連絡先を交換するまでの間、一時的にメール交換ができるサイトを用意する」と返事が届いた。不思議に思いながらも、無料だったので、案内されたサイトでタレントと何度かメール交換をした。ところが途中から、メール交換のためには、ポイントの購入が必要になることが分かった。さすがに、やめようと思っていたところ、芸能事務所の秘書や顧問だという人から、アプリに電話があり、「あなたには本当に感謝している。後でお礼をするので、費用を立て替えておいてほしい」等と何度も電話があった。その言葉を信じて、やり取りを続けたが、 いつまで経ってもお礼が振り込まれない。合計約 30 万円も支払ってしまった。

【事例 9】チーム制ポイント購入対戦ゲームへの招待

 以前、迷惑メールで誘導されて登録した出会い系サイトで数人とメール交換をしていた。ある日、サイトから“ポイント購入対戦ゲーム”への参加決定通知というメールが届いた。勝負はチーム制で、なぜかメール交換していた人とチームを組み、ゲームに参加することが決定していた。「より多くのポイントを購入したチームが勝ちとなる。他のチームに勝てば、高額賞金や旅行券 を獲得できる。負けた場合でも、購入したポイントの 70%が返金され、残りのポイントはサイト 内でメール交換に使える」とのことだった。
   損もせず、高額賞金がもらえるなら面白いと思い、まずは 2 万円分のポイントを購入して参加した。しかし、引き分けの試合が続き、いつまで経っても勝敗が決まらない。延長戦が繰り返されたが、あと少しで勝てそうな試合ばかりだったので、「今度こそ勝ちたい」と思い続けた結果、合計約 20 万円もポイントを購入してしまった。もうやめたいが、チームの仲間から「やめないで!」、「自分は何千万円もつぎ込んでしまったので、あなたがやめると困る」等と引きとめられている。加えて、サイトから、「本日の3 時までにポイントを買わないと、棄権とみなし、全員に返金しない」と連絡がきた。仲間に迷惑がかかると思うとやめられない。家族はだまされている と言う。もう、どうしたらよいか分からない。

占いサイト被害

占いサイト被害について

 令和2年11月26日の国民生活センターの報道発表資料では「消費者が無料のつもりで占いサイト等に登録すると、占い師や鑑定士を名乗る者に「あなたは素晴らしい金運を持っている」「良縁に恵まれる」などと言われ、複数回にわたって占いや運勢鑑 定と称したやりとりをしたものの、金運や恋愛運の向上等の結果は得られず、やりとりのために高額なお金を支払ってしまったなどのトラブルが見られます」とされています。
 しかし、占いサイトと言っても、様々なサイトが存在しますし、そもそも「占い」の定義も一義的ではなく、当弁護団が「占いサイト被害」として扱っているのは、「占い」という体裁をとりつつ、金銭を不当に得る目的で、多数回の無意味なやり取りを続けさせ、高額な料金を支払わせるような占いサイトについてのトラブルです。

 当弁護団では、「サクラサイト」被害と同種の被害だとして2013年(平成25年)5月頃から占いサイト被害にも対応してきています。

 以下に、事例を紹介します。

【事例1】「必ず宝くじの高額当選に導く」と言われたがいつまで経っても結果が出ない

 携帯電話でインターネットを閲覧していると占いサイトの体験ページがあり、名前や生年月日 等を登録した。その後、金運専門の鑑定士Aから鑑定チケットを 1,000 円で発行するとのメッセージがあり、クレジットカードで支払った。Aから職業や所得等を聞かれて答えると、「一攫千金 の鑑定士Bが一週間日本にいるので紹介したい」「Bは選ばれし者のみを鑑定し、必ず宝くじの高額当選に導く」と言われた。やりとりについて口外しないこと、最後まで鑑定を受けること、Bを信じることを約束させられ、Bの鑑定の実績の証拠として、宝くじの当選者の通帳の写真が届いた。2日間の無料期間終了後はメッセージ一通あたり1,500 円分のポイントが必要となったが、宝くじの当選番号を導き出すために特定の言葉を一文字ずつ送信するよう指示され、2週間以上 やりとりし、ポイント料金や鑑定料として銀行口座振込で約17 万円、クレジットカードで約38 万円を支払った。いつまで続けたら結果が出るのかBに聞いても明確な回答がなく、「結果を出さないと必ず高額当選に導くという実績が崩れるため困る」「波動が乱れているから調整が必要だなどと言われ、騙されていると思った。返金してほしい。

【事例2】無料鑑定で三つの「徳」を授けてもらえると言われたが、
無料鑑定期間を過ぎても最後の一つを授かることができず、高額なお金を支払ってしまった

 スマートフォンで「無料鑑定」との広告を見て、占いサイトに生年月日を登録した。その後、鑑定士から「無料で鑑定する」とメッセージがあり、鑑定してもらうことにした。私を守ってくれる三つの「徳」である、「健康の徳」「人間関係の徳」「金運の徳」を授けてもらえるとのことだった。最初の二つの「徳」は早めに授かったが、「金運の徳」をなかなか授かることができず、無 料鑑定期間を過ぎてもやりとりを続けてしまった。毎日のようにコンビニエンスストアでプリペイド型電子マネーのギフトカードを買って、メッセージを送信するためのポイントを購入した。お金の支払いが難しくなり、途中で鑑定をやめようとすると、「今やめるとこれまでのやりとりのすべてが無駄になる、もう少しだ」と引き止められて続けてしまった。また鑑定士は病気で余命 僅かとのことで、その師匠等も登場し、複数の鑑定士とやりとりをするようになった。4か月で 300 万円を支払ってしまい、「騙されているのではないか」と家族に言われて目が覚めた。返金してほしい。

悪質な占いサイトとの判断について

  弁護団では、占いサイトの全てを悪質とは考えておらず、以下のような事情を総合的に判断しています。

  1. 無料で利用するつもりが有料のやりとりに誘導されている
     
  2. 自分だけに向けられた言葉と思わせるメッセージが多数の消費者に届く
     
     占いサイト等に登録すると占い師や鑑定士を名乗る者から、「2万人に1人の幸運の持ち主だ」「選ばれし者のみを鑑定している」など自分だけに向けられた言葉と思わせるメッセージが届いて、消費者が興味を持ち、やりとりを開始しています。しかし実際は同様のメッセージが多数の消費者に向けて送信されています。
     
  3. 数字や記号、特定の言葉等を延々と送信させられて支払いが高額になっている
     
  4. やめたいと思っても占い師や鑑定士に引き止められてやめられない
     
    • 消費者が複数回続くやりとりに対して不信感を抱いて、占いや鑑定がいつ終わるのか占い師や鑑定士を名乗る者に尋ねても、明確な回答がなく、金運や恋愛運の向上等、消費者が期待した効果が得られていないケース
       
    • やりとりをやめたいと思っても、「今やめるとこれまでのやりとりのすべてが無駄になる、もう少しだ」などと言われて何度も返信させられたり、「鑑定を最後まで受けないと不幸になる」など、消費者の不安をあおる言葉に引き止められて、やりとりを継続してしまうケース
       
    • 占い師や鑑定士を信じることや、占いや鑑定を最後まで続けることを事前に約束させられたり、最初にやりとりをしていた占い師や鑑定士の師匠を名乗る者が登場して、複数の者とのやりとりが進行するなど、消費者が途中でやめられないような状況が作られているケース
       
      (以上、国民生活センター 令和2年11月26日付け報道発表資料より)
       
  5. 以上のほか、弁護団が考える悪質と考える事情
     
    • 鑑定の依頼をしてないのに、勝手に利用者を鑑定したというメールが届く
    • その後も、知らない鑑定師や指名をしていない鑑定師から利用者を特定したメールが届く
    • 一度鑑定を終えた鑑定師から、鑑定を依頼していないのに、繰り返し鑑定メールが届く
    • その結果、複数の鑑定師から頻繁に鑑定メールが届くようになる
    • あたかも、利用者その人のためだけの鑑定をしていると思わせる
    • 「あなたにだけ」などと特別感を強調する
    • 今が好機、時間が無い、今だけなどと返信をしないことの不安を煽る
    • 立派な鑑定師が特別に『あなた』を鑑定するなどというメールが届く

各機関の公表資料等

【サクラサイト】

法律的な説明

サクラサイトについて

 上記で紹介したような見ず知らずの利用者に好意を抱いたので会いたいと述べるメッセージ、多額の金員を供与するといった提案をするメッセージ、文字化け解除等の手続のために意味不明な文字列を記載したメッセージを送信するよう指示することは、いずれも不自然・不合理です。
 すなわち、サイト内で利用者が受け取ったメッセージの内容が不自然かつ不合理であることからして、その目的は、いずれも利用者にできるだけ多くのポイント等を消費させて高額の金員を支払わせることにあり、高額な金員を支払わせることによって利するのはサイト運営業者しかいないことから、利用者がサイト内でメッセージのやり取りをしている相手方は、サイト運営業者が組織的に使用している者(「サクラ」)であるといえます。
 そして、サイト運営業者は、「サクラ」を使いながら、その事実を隠してサイトを利用させ、利用者の期待等を煽るなどして利用者を巧みに欺き、利用者に手続費用等の名目で多額の金員を支払わせるものであり、その行為は詐欺に該当します。
 したがって、サイト運営業者に対しては、詐欺を理由とする不法行為に基づき損害賠償請求をしていくことになります(東京高判平成25年6月19日判時2206号83頁、東京地判平成30年12月26日消費者法ニュース123号273頁など多数)。

裁判例

■東京高判平成25年6月19日判時2206号83頁

 本件各相手方等からの申し出は、見も知らない控訴人に対し、指示に従えば数百万円ないし数千万円という多額の金員を供与する、面談や実験対象となってくれれば相当の対価を支払う等、あり得ない不自然な話で、そのいずれについても全く実現していないのであり、本件各相手方等がこれを実現する意思、能力を有していないことは明らかである。
 次に、本件各相手方は、控訴人に対し、①メールの送受信に、専用回線を用いさせたり、メールアドレス、電話番号、個人の氏名を添付する必要があるなどとして、通常の送受信以外に、高額なポイントを消費させていること・・・、②暗号入力操作、口座番号の入力操作等を命じ、さらに、その送受信に多大なポイントが消費されるよう際限なくその手続の繰返しを要求していること・・・、③面会や金員の手渡しを約束してはキャンセルすることを繰り返し、極めて多数の送受信を余儀なくさせていること・・・などを行わせているが、これらの指示に合理性は見いだしがたく、その目的は、いずれも控訴人にできるだけ多くのポイントを消費させ、被控訴人に対し、利用料金名下に高額の金員を支払わせることにあることは明らかである。そして、高額な利用料金を支払わせることによって利せられるのは被控訴人をおいてほかにない・・・。それにもかかわらず、本件各相手方が控訴人に利用料金を支払わせようとしている事実は、本件各相手方には利用料金の負担義務が課せられていない事実及び本件各相手方が被控訴人の利益を意図して行動している事実を推認させる。また、このことは、前記・・・の本件各サイトにおける本件各相手方以外のメール相手についても同様である。
 したがって、控訴人が本件各サイトにおいてメール交換した本件各相手方等は、一般の会員ではなく、被控訴人が組織的に使用している者(サクラ)であるとみるほかはない。
 以上によれば、被控訴人は、本件各サイトにおいて、サクラを使用して、かつサクラであることを秘して、資金援助や連絡先交換又は待合せ等、役務ないし利益の提供をする意思もないのに、それがあるように虚偽のメールを送信させて、それらが一定程度実現する可能性があると控訴人を誤信させ、控訴人に役務ないし利益の取得のため、送受信等を多数回繰り返させたり、上記資金援助等の目的達成のためには虚偽の暗号送信等の手続が必要であるとの虚偽の事実を申し向けてその旨控訴人を誤信させ、利用料金名下に多額の金員を支払わせた詐欺に該当するものというべきである。被控訴人は、控訴人に対する不法行為責任を免れることはできない。

■東京地判平成30年12月26日消費者法ニュース123号273頁

 本件サイトは、その利用者に、被告Y1社の利益を図ることを目的としている者との間でメールを交換させ、あたかも利用者と交際を求めている相手方とメールさせているものと誤信させ、その誤信に乗じて、会員資格の変更のための手続費用や利用料名下に金員の支払を行わせていたものと認められ、これらの一連の行為全体が詐欺に当たる違法なものといえる。

占いサイトについて

「宝くじに当選する」などと告げられてやり取りを続けたケース

 悪質な占いサイト被害のうち、「宝くじに当選する」などと告げられてやり取りを続けているようなケースでは、サイト運営業者に対して、詐欺を理由とする不法行為に基づき損害賠償請求をしていくことになります。
 この点、松江地判令和3年12月15日(ウエストロージャパン)は、鑑定士を装って、宝くじの高額当選を確実にさせることができる運勢鑑定が実在し、その鑑定を受けるためにはポイントを購入する必要がある旨の嘘の内容のメッセージを順次送信し、被害者にこれらを閲読させてその旨誤信させ、金員を支払わせたことが詐欺罪(刑法246条1項)に該当するとして、被告人(加害者)は刑事罰に処せられています。このようなケースにおいては、民事上も不法行為責任を負うことは明らかと考えられます。

「幸せになれる」などと告げられてやり取りを続けたケース

 他方、同じく悪質な占いサイト被害でも、鑑定士と称する者から「悩みが解決し幸せになれる」「運勢があがる」「幸運の扉が開かれる」などと言われ、鑑定と称してメッセージ送信を繰り返し行わされたようなケースでは、「占い」という性質上、明確に詐欺とまで言い切ることができるか判断が難しいこともあります。また、占いサイト運営業者側からも、利用者の窮迫、困惑等に乗じたり、殊更にその不安、恐怖心を煽ったりしているわけではないとか、利用料が多額になったのはサイトが提供するサービスが利用者の嗜好にあっていたことの結果に過ぎず、何ら違法なものではないなどと主張されることがあります。
 もっとも、このような占いサイト被害の場合であっても、少なくとも個別鑑定をしているとは認められないとして、詐欺に該当すると判断して不法行為責任を認めた裁判例(東京地判平成30年4月24日消費者法ニュース116号350頁)や、実在しない鑑定士があたかも実在すると欺罔したとして不法行為責任を認めた裁判例(岡山簡判令和4年5月31日消費者法ニュース133号166頁)のほか、占いサイト運営業者の提供するサービスの目的・手段・結果に照らして、社会的相当性を逸脱する違法な行為であると判断して不法行為責任を認めた裁判例(東京地判令和元年12月2日判タ1484号213頁)があります。
 上記東京地裁令和元年判決の判断枠組みは、宗教団体による勧誘行為の違法性を認めた名古屋地裁平成13年6月27日判決(判タ1131号148頁)や易断(占い)の鑑定会を行っていた者についての不法行為責任を認めた大阪高裁平成20年6月5日判決(消費者法ニュース76号281頁)と同様です。大阪高裁判決は、不安感や恐怖感を煽るような場合について違法性を認めたものですが、上記東京地裁判決は、そのような場合でなくても違法性を認めています。
 

「宝くじに当選する」などと告げられてやり取りを続けたケースの裁判例

松江地判令和3年12月15日(2021WLJPCA12156006)

被告人は、氏名不詳者らと共謀の上、

 第1 副業サイトに登録した女性から認証取得手続費用等の名目で現金をだまし取ろうと考え、・・・前記副業サイトにメンバー登録したA(当時48歳)が使用する携帯電話機に、副業による報酬を振り込むためには「シリアル認証」という手続が必要であり、同手続をするためにはジュエルポイントを購入する必要がある旨のうその内容のメッセージを順次送信し、同人にこれらを閲読させてその旨誤信させ、よって、・・・現金合計240万円を振込入金させ、もって人を欺いて財物を交付させ、

 第2 略

 第3 「○○」と称するサイトを利用して運勢鑑定費用等の名目で現金をだまし取ろうと考え、・・・前記サイトを閲覧したB(当時64歳)の携帯電話機に、鑑定士を装って、宝くじの高額当選を確実にさせることができる運勢鑑定が実在し、その鑑定を受けるためにはポイントを購入する必要がある旨の嘘の内容のメッセージを順次送信し、前記Bにこれらを閲読させてその旨誤信させ、よって、同人に、・・・現金合計351万7000円を振込入金させ、もって人を欺いて財物を交付させ、

 第4~第6 略

 たものである。

・・・

 【法令の適用】

 ・罰条 判示第1、第3、第5の各所為につき、それぞれ包括して刑法60条、246条1項

(注)上記「第1」はサクラサイト被害、「第3」が占いサイト被害である。

「幸せになれる」などと告げられてやり取りを続けたケースの裁判例

東京地判平成30年4月24日消費者法ニュース116号350頁

 被告会社の本件各サイトにおいては、占いや祈祷等を行う者としての鑑定師という者は存在しないか、少なくとも、原告について個別に占いにより運勢をみた上で、メールを送信したり、原告からの申し込みに応じて占いや祈祷等を行ったことはないと認めることができるのであるから、被告会社の鑑定師の行為は、占いや祈祷に基づくものではなく、単に、原告をして本件各サイトにおいて有料のポイントを費消させるために行っているものにすぎないといえる。
 ・・・被告会社は、本件各サイトにおいて占い等を行うことを標榜しておきながら、実際はこれを行うことをせずに、本件各サイトのシステムを利用して被告会社の有料のポイントを原告に費消させて被告会社が利益を得る行為をしているものである。
 そして、原告が、本件各サイトが上記のようなものであることを知った上でこれを利用していたとは認められない(・・・なお、被告らは、被告会社の鑑定師が実在し、実際に個別に占いや祈祷等を行っていたことを主張しているのであり、被告会社の鑑定師が実在せず、又は、実際に個別に占いをしていないことを原告が知った上で本件各サイトを利用していたことを主張するものではない。)。
 したがって、被告会社の行為は、詐欺に該当するものであり、原告に対する不法行為に該当するものである。

■東京地判令和元年12月2日判タ1484号213頁

 鑑定の対価を請求する行為は、当該鑑定の内容に合理性がないとか、成果が認められないなどの理由で、直ちに違法な行為となるものではない。しかし、鑑定を勧誘することが不当な目的に基づいており、不当な手段によって鑑定の勧誘がなされ、相手方が正常な判断を妨げられた状態で不当に過大な金銭を鑑定の対価として支払ったような場合には、鑑定の名目で対価を請求する行為は社会的に相当な範囲を著しく逸脱した違法な行為となるというべきである。
 本件各サイトで提供されていたサービスは、・・・会員がそのサービスの効用及び費用などを正常に判断することができる状態で利用する限りは不当なものとはいえず、違法性を認めることは困難である。しかしながら、何らかの悩みを抱えて多少なりとも精神的に不安定な状態にあり、かつ占いや鑑定の結果によってその状態から精神的に安定した状態に移行し得ると考えている会員の中には、上記①ないし④のメールの内容が心理状態に過度に作用して、一回の鑑定結果が出るまでに6000円程度しかかからないことも相まって、サービスの効用及び費用などについて正常な判断をすることができない状態に陥ってメールのやり取りを繰り返し、その結果、ポイント購入のために自身の生活水準に比して多額の金銭を支出するに至る者がいることは容易に想像でき、本件各サイトを運営する被告〇〇〇〇にも十分認識可能なものであったというべきである。そのような会員との関係においては、本件各サイトで提供されるサービスは、専ら金銭を支払わせるという不当な目的の下、心理的に正常な判断ができない状態に陥らせる不当な手段によって、不当に過大な金銭を支払わせているものというほかなく、そのサービスの提供行為は社会的に相当な範囲を著しく逸脱した違法な行為となると言わざるを得ない。

(参考)

■大阪高判平成20年6月5日消費者法ニュース76号281頁

 易断による鑑定料の支払又は祈祷その他の宗教的行為に付随して祈祷料の支払を求める行為は、その性格上、易断や祈祷の内容に合理性がないとか、成果が見られないなどの理由によって、直ちに違法となるものではない。しかしながら、それに伴う金銭要求が、相手方の窮迫、困惑等に乗じ、殊更にその不安、恐怖心を煽ったり、自分に特別な能力があるように装い、その旨信じさせるなどの不相当な方法で行われ、その結果、相手方の正常な判断が妨げられた状態で、過大な金員が支払われたような場合には、社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為として、不法行為が成立するというべきである。

解決方法

サイト利用料等の支払方法による違い

 解決方法については、サイト利用料等の支払方法によって異なります。
 クレジットカード決済や電子マネー決済(ネットライドキャッシュ、セキュリティマネー、ビットキャッシュ、ウェブマネーなど)の場合には、多くのケースで、決済代行業者がその決済に関与していますので、決済代行業者に対してサイト運営業者の情報開示を求めることになります。また、決済代行業者を介してサイト運営業者に対して返金を求めていきます。
 他方、サイト運営業者が指定した口座に振り込む方法でサイト利用料等を支払っている場合は、多くのケース(詐欺と評価できるケース)で当該振込先口座を凍結するとともに、口座名義人(サイト運営業者に限りません)に対しても返金を求めることになります。

資料確保の重要性

 以上のような解決方法をとるうえでは、サイトでどのようなやり取りがされたのか、サイトへの支払い履歴(いつ、いくら、どのような方法で支払ったか等)を明らかにする必要があります。
 被害に遭っているかもしれないと思った時点で速やかにサイト内のメッセージを古いものからスクリーンショットやカメラで撮影して保全していただくことが重要です。これは、サイト内のメッセージは1週間程度で消えて行ってしまう仕組みになっていること多いためです。一旦返金を求めたりすると、サイト内に入れなくなったり、過去のやり取りが削除されてしまいますので、まずは、保存して下さい。
 支払いについては、①クレジットカード利用明細、②電子マネーの証票または電子マネーを購入した際にコンビニで発行されたレシート、電子マネーを決済したときに届くメール、③銀行の振込票などの資料を準備していただくことになります。このうち、②電子マネーの証票を破棄されてしまっている場合は、決済代行業者や電子マネー発行会社に対する照会などにより、取引内容を明らかにしていく必要があります。

訴訟等の裁判手続の利用

 サクラサイト・占いサイト被害については交渉によって解決できるケースが多いですが、交渉による解決が困難な場合には、回収可能性も踏まえて訴訟に移行することを検討します。交渉段階では低水準の返金しか提案してこなかったサイト運営業者が、訴訟のなかで(裁判官からある程度の心証が開示された段階で)全額返金の和解案を提示してくることもあります。
 また、訴訟を提起する前に「仮差押え」という裁判手続を利用し、サイト運営業者の財産(預金や債権など)を仮に差押えすることもあります(訴訟をしている間に、サイト運営業者の財産が散逸し、勝訴判決を得ても回収ができなくなってしまうことを防ぐために行う手続です。)。
 このように当弁護団では、できる限りの手を尽くして、被害回復を実現すべく活動しています。

その他(決済代行業者に対する責任追及)

  解決方法や解決までの大まかな流れは、上記のとおりですが、決済代行業者を介してもサイト運営業者と連絡が取れないこともあります(決済代行業者がサイト運営業者との加盟店契約を解除してしまっているような場合)。
 このような場合には、被害回復のために、決済代行業者に対する責任追及を検討することもあります。

裁判例

お知らせ

弁護士費用

相談料

 サクラサイト・占いサイト被害の相談については、初回相談は無料で実施しています

着手金・成功報酬金・実費

 相談から依頼に進む場合、着手金や各実費(調査や各種手続費用など)が必要となります。資力の無い方には、法テラスで援助の申込も検討しますし、分割払いにも応じます。また、ご依頼により成果が発生した場合には成功報酬金が発生します。いずれにしても、事案や相談者ごとに異なりますので、担当弁護士とよくご相談ください。

被害相談の連絡先

相談申込フォーム

相談申込について

※ 初回の 面談相談は無料 です。

※ 被害相談から受任の流れや、初回相談料以外の費用(弁護士費用・実費)については、こちらをご参照ください。

【フォームの入力から送信まで】

  • 質問1~質問9は入力必須項目です。必ず記入してから送信してください。
     
  • 質問10以降は任意入力ですが、できるだけ入力していただいた方が、そのあとの相談がスムースです。入力方法や記載内容に迷う場合は、大まかな内容を記載するか、空欄として送信してください。送信後に弁護士が詳しくお話を聞かせていただきますので、ご安心ください。

【フォームの送信から相談までの流れ】

  • 下記のフォームにご記入・送信いただきましたら、担当弁護士からご連絡いたします。担当弁護士と面談相談の日程調整をお願いします。
     
  • フォーム送信の翌営業日(土日祝日は除く)までに担当弁護士からご連絡がない場合には、下記の担当者までお電話ください。
     
  • ご相談の内容から当弁護団の取り扱っている事件ではないことが判明した場合には、当弁護団では事件として受任することができないため、担当弁護士から事件のご依頼をお断りさせていただきますので予めご承知おきください。

※「情報商材被害」については、こちらをご覧下さい。

「簡単にもうかる」という情報商材を購入し、有料のサポートプランを契約したが、解約したい(国民生活センター・2021年7月30日公表資料)

【受付担当】
 Tel 03-5951-6077
 〒171-0014
 東京都豊島区池袋2-55-13 合田ビル2階
 池袋市民法律事務所
 松宮 徹郎

  • 電話での相談や、相談受付は行っておりません。
     
  • 電話でフォームの記載内容についてお答えすることはできません。記載内容について迷う場合でも、大まかな内容を記載するか、空欄とするなどして送信してください。送信後に弁護士が詳しくお話を聞かせていただきますので、ご安心ください。
     
  • 電話では、当弁護団の取り扱っている事件かどうかをお答えすることは出来ません。まずはフォームを送信頂き、担当者が被害の内容を詳しくお聞かせ頂いてからお伝えします。
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