「令和4年資金決済法改正に係る内閣府令案等(資金決済法のうち前払式支払手段に係る部分)」に対する意見(パブコメ・2022年11月7日)

意見の提出先

 金融庁ウェブサイト

提出意見

第1 「前払支払手段に関する内閣府令(案)」について
 1 第5条の2条1項について
(意見の趣旨)
 高額電子移転可能型前払式支払手段の範囲については、1)移転が可能、ないしは前払式支払手段記録口座に記録が可能な1件当たりの未使用残高の額が2万円を超えるものであること、又は、2)移転が可能、ないし前払式支払手段記録口座に記録が可能な1カ月間の未使用残高の総額が5万円を超えるものであることのいずれかとすべきである。
(意見の理由)
 当弁護団で扱っているサクラサイト等の被害事案では、決済手段として銀行振込やクレジットカード決済のほか前払式支払手段が利用されているケースも多い。しかし、前払式支払手段の場合、本人確認義務が課されていないため、決済代行業者が関与しない形で他者に譲渡された場合は、資金の移転先が判明しないことが多く、被害回復は極めて困難である。また、サクラサイト等の悪質業者は、少額の前払式支払手段を多数回利用させることによって、総額では高額の決済を行っていることも多い。
 以上のことからすると、本来は全ての前払式支払手段について本人確認等を行うべきであり、内閣府令案で示された範囲では狭すぎる。一方、全ての前払式支払手段について本人確認等を行うことは、費用と時間がかかることも懸念される。統計資料によれば、前払式支払手段発行会社4社のチャージ残高の譲渡額の分布は10万円以上が0.1%で、2万円未満が約97%であるとのことであるから、少なくとも、1回あたりの移転額は2万円超、1か月の総額については5万円程度とすべきである。このような範囲としても、事業者にとって許容の範囲と考えられる。
 2 第23条の3について
(意見の趣旨)
 前払式支払手段発行者が、前払式支払手段の利用者の保護を図るため、前払式支払手段を発行する場合に、上限額を設定すること、移転の状況を監視するための体制ないし不適切な移転を防止するための体制の整備、その他の不適切な利用を防止するための適切な措置を講ずることに賛成する。
(意見の理由)
 上記のような措置が講じられれば、前払式支払手段の不正利用による被害が縮小すると考えられるため、上記措置を講じることについては賛成する。

第2 「事務ガイドライン(案)(第三分冊 金融会社関係 5 前払式支払手段発行者関係)」
(意見の趣旨)
 内閣府令第23条の3第1号及び第2号に規定される措置に関する監督に当たっては、以下の点に留意すべきとする規定を新たに設けることに賛成する。
1 残高譲渡型前払式支払手段を発行する場合、4) 不適切な利用が疑 われる取引を行っている者に対する利用停止等の対応及び原因取引の主体や内容等についての必要な確認を実施すること、5) 再発防止等の観点から、不適切な利用の類型に応じ、イ.ウェブサイト等への不適切な利用に関する注意喚起の表示、ロ.不適切な利用に悪用されているサービス内容の見直し等の措置を迅速かつ適切に講じる体制を整備することとすること。
2 内閣府令第23条の3第2号に掲げる前払式支払手段を発行する 場合、1) 防止すべき不適切な利用の類型の特定及び必要に応じた内容の見直しをすること、2)転売を禁止する約款等の策定や、サービスに係る上限金額を不適切な利用が抑止できると考えられる水準に設定するなど、適切かつ有効な未然防止策の検討及び実施をすること、3)不適切な利用が疑われる取引を検知する体制を整備すること、4) 不適切な利用が疑われる取引を行っている者に対する利用停止等の対応及び原因取引の主体や内容等についての必要な確認をすること、5)再発防止等の観点から、不適切な利用の類型に応じ、例えば、以下のような措置を迅速かつ適切に講じる体制を整備すること イ.ウェブサイト等への不適切な利用に関する注意喚起の表示、ロ.販売時における販売端末、店頭に陳列するプリペイドカード等への不適切な利用に関する注意喚起の表示、ハ.不適切な利用に悪用されているサービス内容の見直し(例えば、悪用されている販売チャネルや販売券種における販売上限額の引下げ、取扱いの停止など)
(意見の理由)
  上記のような措置が講じられれば、前払式支払手段の不正利用による被害発生の防止に役立つと考えられるため、上記措置を採ることについて賛成する。

第3 その他
(意見の趣旨)
 電子移転可能型の前払式支払手段について、譲渡が自由に行われ、送金手段として機能するときには、為替取引としての実効的な規制・監督を行うべきである。
(意見の理由)  
 現行法上、前払式支払手段を譲渡すること自体は禁じられていないが、譲渡が自由に行われ、換金・返金も自由に行われる場合には、為替取引と同様の機能を有することになるから、資金移動サービスとして事業が行われていると考えるべきである。したがって、電子移転可能型の前払式支払手段についても、譲渡が自由に行われ、送金手段として機能するときには、本来為替取引の規制対象とすべきことになる。
 また、前払式支払手段が送金手段として用いられることを放置すると、本来、利用者資金の全額保全が求められるサービスであるにもかかわらず、利用者資金を半額の水準しか保全せずにサービスを提供していることになり、利用者保護上も問題がある。かかる行為は規制の回避と言わざるを得ないものであり、公正な競争の観点からも問題がある。
 以上のことから、上記行為は、為替取引として規制対象とし、実効的な規制・監督が行われるべきである。

  • URLをコピーしました!
目次