意見書(クレジット過剰与信規制の緩和について)(平成31年4月17日)


20190417・意見書(クレジット過剰与信規制の緩和について)

 

                              意  見  書

                      (クレジット過剰与信規制の緩和について)

                                                         平成31年4月17日

 

経済産業省 商務情報政策局

商務・サービスグループ 商取引監督課 御中

 

                                                 クレジット・リース被害対策弁護団

                                                  団 長 弁護士 瀬 戸 和 宏

 当弁護団は、クレジットやリースなどの与信を伴う消費者被害に焦点を当て、具体的事件の被害救済を行うとともに、不適正な与信を生じさせる問題についての実態を把握し、問題解決に向けての立法提言などを行うことを目的に結成された有志弁護士の団体である。

現在開催されている産業構造審議会商務流通情報分科会割賦販売小委員会(以下、「割賦販売小委員会」という。)では、情報通信技術(ICT)の進展や決済テクロノジーの進化を背景として与信審査に「リスクベース・アプローチ」という考え方を採用し規制緩和を行う方向で急ピッチに議論がなされているが、当弁護団の扱っている多数の事件からは、クレジット過剰与信規制を緩和することに、強い疑義を感じざるをえず、以下のとおり意見を述べるものである。

 

第1 意見の趣旨

割賦販売法上規制される与信審査につき、仮に「リスクベース・アプローチ」という考え方を採用したとして、

1 クレジット会社独自の「技術・データを活用した与信審査方法」を使用する場合であっても、カードその他の物又は番号、記号その他の符号(以下、「クレジットカード等」という。)を利用者に交付又は付与する場合に義務付けられている支払可能見込額調査義務(割賦販売法30条の2第1項)の適用除外とすることを認めるべきではない。

2 「技術・データを活用した与信審査方法」を使用する場合であっても、支払可能見込額調査の際の指定信用情報機関の個人信用情報照会義務(同法30条の2第3項)、及び、基礎特定信用情報の登録義務(同法35条の3の56第2項、第3項)を免除することを認めるべきではない。

3 利用極度額10万円以下のクレジットカード等の交付又は付与時であっても、支払可能見込額調査の際の指定信用情報機関の個人信用情報照会義務(同法30条の2第3項)、及び、基礎特定信用情報の登録義務(同法35条の3の56第2項、第3項)を免除することを認めるべきではない。

 

第2 意見の理由

1 当弁護団が扱う与信を伴う消費者被害の実態と消費者保護の必要性

冒頭記載のとおり、当弁護団はクレジットやリースなどの与信を伴う消費者被害を扱っているが、平成20年の割賦販売法改正により個別クレジットに対する規制が強化されてからは、包括クレジットを利用した消費者被害を多く扱うようになっているのが実感であり、実際にもインターネットやスマートフォンの普及により包括クレジットをはじめとする多様な決済手段を利用した被害が増加している実情にある。

このような件で弁護団が扱う特徴的な事件としては、サクラサイト(いわゆる「悪質な出会い系サイト」)被害、占いサイト被害、情報商材被害などが挙げられる。

たとえば、サクラサイト被害事件は、携帯電話に届いた広告メールにアクセスしたことをきっかけとして出会い系サイトに登録したところ、「あなたと話がしたい。その代わりに金銭的な援助をしたい」という内容のメールが届き、少しおかしいと感じつつも相手とメールのやり取りを続け、その後、サイトからお金を受け取る方法を説明するメールが届き、文字化け解除のためにポイント購入が必要などと言われ、ポイント購入を重ねてしまい高額の被害に陥るという被害である。最初は少額のポイント購入であるが、何度ポイントを購入して手続を行ってもエラー表示が出るなどしてなかなかお金が受け取れないため、今さら後戻りもできずに高額な支払いに至るというもので被害は深刻である。

このように現状では、包括クレジットの少額取引であっても消費者被害についてのリスクは決して小さいわけではなく、むしろ深刻な消費者被害の入り口となっている。また、一つ一つの取引は少額であっても積み重なることで多額の被害となり、多重債務状況に陥ることも全く珍しくない。そして、決済方法が多様化し利便性が増しているために、無防備なままに消費者被害に遭ってしまうという実情にある。

従って、このような被害状況の下では、包括クレジットについてマンスリークリア取引を割賦販売法の規制対象として抗弁の接続を認めたり、多様な決済方法における実態に即した消費者保護規制の整備こそが急務である。

また、上記の消費者被害はスマートフォンの普及により若年者にも蔓延するものであるが、成年年齢を20歳から18歳に引き下げる改正民法施行が2022年4月に迫っており、未成年者取消権を失う18歳、19歳についての消費者保護の強化も極めて重要な局面にある。そして、資力のない若年者の消費者被害は、クレジット取引や消費者金融からの借入と不可分な関係にあることもかねてから指摘されるところである。

以上のような状況からすれば、クレジット取引の与信審査について規制緩和を行う状況にはなく、少なくとも現状を維持し、与信審査は慎重であるべきということがまず確認されなければならない。

 

2 割賦販売小委員会での議論と消費者保護重視の必要性

上記1の現状の中で冒頭記載の割賦販売小委員会が開催されている。

同小委員会は平成28年改正を経て少し間があったが、平成31年2月25日以降再開され、その開催趣旨は、情報通信技術(ICT)の進展を背景に決済テクロノジーが進化する中で、決済サービス・主体が多様化し、「業」の垣根を越えて事業が展開されていること、与信審査にビッグデータやAI等が活用されるようになっていること、決済情報の活用により新たな付加価値が生まれビジネスモデルの転換が促されていることなどから、このような内外環境の変化に対応できる割賦販売法制の在り方について検討するという点にあるとされている。

その検討の中で、与信審査に「リスクベース・アプローチ」という考え方を採用し規制緩和を行う方向の議論が急ピッチでなされているが、上記1の消費者被害の現状に鑑みれば、与信規制を緩和する方向での改正はなされるべきではなく、消費者保護に重きが置かれるべきであり、割賦販売法の目的である消費者保護、とりわけ多重債務者発生の未然防止という目的が決して減じられないようにすべきである。

以上を踏まえて、現在割賦販売小委員会で議論されている規制緩和の具体的方向性について、以下論述する。

 

3 リスクベース・アプローチの考え方について

割賦販売小委員会では、規制緩和の方向性として「リスクベース・アプローチ」、すなわちリスクに応じ段階的に柔軟な規制を行うという考え方を導入することが検討されている。具体的には、「少額・低リスクなサービス」を提供する事業者には、リスクに応じた相応の規制を課すということである。「少額・低リスクなサービス」とは、少額の範囲で後払い決済を提供するサービスのことを意味し、ここでいうリスクとは、消費者が過剰与信等により支払いが過度に困難になるリスクや、情報漏洩や情報の不正利用というセキュリティリスク、公正な取引が損なわれるリスク(取引条件の表示に関するものなど)などを意味するとのことである。

たしかに、リスクに見合った規制という考え方自体は必ずしも否定されるべきものとは思われない。しかし、とりわけ消費者が過剰与信等により支払いが過度に困難になるリスクについては注意が必要であり、リスクベース・アプローチという名の下に、多重債務をなくすために過剰与信を防止しようとした法の趣旨を没却するような規制緩和を容認すべきではない。小委員会で示されているように、「少額・低リスクなサービス」は、「月額給与等の中で賄われるような少額の支出を後払いの形式にするものであり、支払が過度に困難な債務を負うことは通常想定しにくい」と単純に考えることは疑問である。

例えば、1枚のクレジットカードの与信限度額が仮に10万円であったとしても、クレジットカードを何枚も持っていれば、与信総額は多額になるから、1枚のクレジットカードによる与信が「少額・低リスクなサービス」であったとしても、全体としてみれば「少額・低リスクなサービス」とはいえず、多重債務に陥る可能性は否定できない。これらのことは上記1で指摘した実際の被害事案からしてもリスクが高いことは明らかである。

上記1のような被害実態にある消費者被害を防止するためには、リスクに見合った規制という場合のリスクについて、消費者個人に対する与信内容を全体的にとらえて慎重に考えるべきであるし、規制の在り方についても慎重な議論を行うべきである。

 

4 支払可能見込額調査義務・指定信用情報機関の個人信用情報の照会義務及び与信情報の登録義務の免除について

(1)今回の割賦販売小委員会の提案について

割賦販売小委員会では、クレジットカード等の交付又は付与時の過剰与信規制の緩和策が検討されており、主に以下のような提案がなされている。

① 利用限度額30万円を超えるクレジットカード等の交付又は付与時に課されている支払可能見込額調査義務(割賦販売法30条の2第1項)を、クレジット会社独自の「技術・データを活用した与信審査方法」を使用する場合には適用除外とすること

② 「技術・データを活用した与信審査方法」を使用する場合は、支払可能見込額調査の際の指定信用情報機関の個人信用情報照会義務(同条第3項)、及び、基礎特定信用情報の登録義務(同法35条の3の56第2項)を免除すること

③ 利用限度額10万円以下のクレジットカード等の交付又は付与時には、指定信用情報機関の照会義務・登録義務を免除すること。

しかし、これらの規制緩和策は、平成20年の割賦販売法改正において、多重債務者の発生を未然に防止し消費者保護を図ろうとした趣旨を没却するものであり強く反対する。

すなわち、以前、消費者金融やクレジット取引を通じた多重債務問題が深刻な社会問題になっていたため、平成18年には貸金業法が改正されて総量規制などの規制が導入され、平成20年には割賦販売法が改正され、すべての与信業者が指定信用情報機関の会員となり与信審査における信用情報の照会義務と与信情報の登録義務を課すこととなった。

しかし、今回の規制緩和策は、以下のとおり、上記の割賦販売法改正の趣旨を全く無意味にするものである。

(2)「技術・データを活用した与信審査方法」を使用することについて

割賦販売小委員会では、クレジット会社において膨大な取引データ等やノウハウに基づくスコアリングモデルによる与信審査が行われていること、貸付(レンディング)分野における与信審査にビッグデータやAIが活用されていること、少額決済分野において、年収や預貯金という静的情報だけではなく、支払・取引履歴、購入商品データ等の動的情報を取得しこれらをAI等によって解析して与信審査が行われていることなどが紹介されている。

上記のように、ビッグデータやAIを活用することによって、より適切な与信審査が行われるということであれば、各クレジット会社がそのような与信審査方法を採用すること自体は問題ない。しかし、このような「技術・データを活用した与信審査方法」は、過剰与信を防止するために法律で定められた与信の上限(支払可能見込額)の範囲内で、各クレジット会社ごとに、それぞれの与信額を定める際に用いられるべきものである。各クレジット会社が「技術・データを活用した与信審査方法」を採用した場合に、支払可能見込額調査を不要とすることは、認めるべきではない。

もし仮に、「技術・データを活用した与信審査方法」を行う場合には、支払可能見込額調査は不要とするというのであれば、その「技術・データを活用した与信審査方法」が、支払可能見込額調査を不要とするほどに、過剰与信が行われることへの懸念を払拭するに足りる客観的な合理性を有するものでなければならず、その客観的な合理性を、事前に、確認できることが必要であるし、その確認の客観性を担保するためには、事業者自身の確認ではなく行政等の第三者によることが不可欠である。

しかし、そもそも、「技術・データを活用した与信審査方法」はビッグデータやAIを活用した方法であり、このような方法が支払可能見込額調査に代替可能であるかどうかの判断を、事前かつ客観的に行うことは不可能である。

したがって、「技術・データを活用した与信審査方法」を採用する場合であっても、支払可能見込額調査の提供除外を認めるべきではない。

(3)指定信用情報機関の照会・登録について

割賦販売法において指定信用情報機関の照会・登録義務が規定されているのは、与信業者が貸倒れのリスクを回避するためではなく、当該個人の返済能力を超えた多額・多重の借入れが生じないよう、与信業者にチェックさせるためである。このような役割を果たすためには、当該個人の包括的な債務状況を知る必要があり、そのためには債務状況についての情報を集約する必要がある。したがって、「技術・データを活用した与信審査方法」を採用する与信業者であるからといって指定信用情報機関に登録することは免除されるべきではないし、「技術・データを活用した与信審査方法」を採用する与信業者も、指定信用情報機関を照会し、他の与信業者における与信状況を鑑みた与信審査をすべきである。

したがって、「技術・データを活用した与信審査方法」を使用する場合であっても、支払可能見込額調査の際の指定信用情報機関の個人信用情報照会義務及び与信情報の登録義務は免除されるべきではない。

(4)利用限度額10万円以下の与信について信用情報照会義務・登録義務を免除することについて

既に現行割賦販売法において、極度額30万円以下のクレジットカード等の交付又は付与時には、原則として、支払可能見込額調査義務が免除されるという少額与信への特例措置が規定されており、これに加えて、さらに少額の場合の信用情報の照会義務・登録義務まで免除することは認めるべきではない。

なぜならば、指定信用情報機関に与信情報を全件登録し照会することによって初めて、与信を受ける者の包括的な債務状態を把握することができ、これによって実効的な多重債務の未然防止が可能になるからである。信用情報の照会義務・登録義務まで免除することは、多重債務防止対策を業界全体のセーフティネットとして構築した制度趣旨を崩壊させるものであり認められるべきではない。

なお、割賦販売小委員会では、「少額・低リスクなサービス」の極度額を10万円とする案が出されており、その理由として、月額給与等から概ね支払いが可能なこと、主として日常的な買い物や趣味の支払いが想定されることが挙げられている。しかし、消費者被害に遭いやすい20歳代前半の平均年収は約263万円[1](月額は約22万円である。)にすぎないこと、日常的な買い物に5万円以上使うことは考えにくいことから、極度額としては5万円程度が妥当と考えられる。

 

5 総括

以上のとおり、現在割賦販売小委員会で議論されているクレジットの与信規制についての緩和策は現在の消費者被害の実態に逆行するものであり、技術水準の向上によって与信体制に変化があったとしても、消費者保護が現状よりも後退しないように慎重に行われなければならない。消費者の利便性という名目の下、かえって消費者の利益を損ねることにならないよう十分な配慮がなされるべきである。

なお、この点を議論するためには、消費者被害の実態を前提とした十分な議論が必要であり、そのためには消費者団体等の意見の聴取は必要不可欠である。現在の割賦販売小委員会の構成では消費者被害の実情が十分把握できていない可能性が高い。早急に消費者団体等の意見を聴取する場を設け,それを踏まえて審議がされるべきである。適正な手続の下での審議により,本意見書の趣旨に添う結論が出されるものと確信する。

よって、意見の趣旨のとおり意見を述べるものである。

                                                                以上

 

[1] 「平成29年分 民間給与実態統計調査-調査結果報告-」(平成30年9月 国税庁長官官房企画課)


2019/04/17更新



債権譲渡型割賦販売についての意見書(平成29年10月25日)


20171025債権譲渡型割賦販売についての意見書

 

                                意見書

                                                         平成29年10月25日

経済産業省商務情報政策局商取引監督課 御中
消費者庁 取引対策課 御中

                                                    クレジット・リース被害対策弁護団

                                                    団 長  弁護士 瀬戸和宏

 

第1 意見の趣旨
ファクタリングその他の名称を問わず,特定の販売業者または役務提供事業者との間の当該販売業者または当該役務提供事業者の顧客に販売する商品や指定権利,あるいは顧客に提供する役務の割賦販売代金債権を譲り受ける旨の基本合意に基づき,当該販売業者や当該役務提供事業者から割賦販売代金債権を買い取り,顧客に対し,譲り受けた割賦販売代金債権の支払を求める業者について,以下のような処置をするよう求める。
1 上記のような仕組みで債権譲渡を受けることが,割賦販売法第2条第4項の「個別信用購入あっせん」に該当することを「割賦販売法(後払分野)に基づく監督の基本方針」「割賦販売法の解説」などにおいて明らかにし,周知すること。
2 上記のような仕組みで債権譲渡を受ける者が,割賦販売法第35条の3の23の登録を受けていない場合には,
(1)無登録営業として,適正な措置をとること。
(2)同法第49条第3号に該当するものとして,捜査当局に対して通知・告発すること。

第2 意見の理由
1 当弁護団について
当弁護団は,平成17年に,過剰与信被害対策弁護団という名称で,東京3弁護士会の主に消費者問題を取り扱う有志弁護士を中心に結成された弁護団で,その後現在のクレジット・リース被害対策弁護団と改称したものである。クレジット会社やリース会社による消費者や個人事業主,小規模事業者に対する過剰与信被害の救済にあたることを目的として活動している。

2 問題とする取引の仕組みと被害の実情
(1)取引の仕組み
当弁護団が取り扱う事件の中で,近時,本意見書で問題とする以下のとおりの債権譲渡(「ファクタリング」)を利用した与信システムを用いる被害事件が多数発生している。
「ファクタリング」を利用した与信システムとは,次のような仕組みである。なお,以下,この仕組みを「ファクタリング方式与信」といい,「ファクタリング方式与信」で債権譲渡を受ける業者を「ファクタリング方式与信業者」と呼ぶこととする。また,販売業者及び役務提供事業者を合わせて「販売業者等」という。
① ファクタリング方式与信業者と販売業者等とは,予め,販売業者等の顧客に対する割賦販売代金債権を,ファクタリング形式与信業者が額面の一定割合の価格で買い受ける包括的な債権譲渡契約を締結する。
② 販売業者等は顧客との間で,割賦販売契約を締結する。
③ 販売業者等は,ファクタリング方式与信業者に対し,顧客に対する割賦販売代金債権を譲渡し,譲渡代金を受け取る。
④ 顧客が販売業者等との間で結ぶ割賦販売契約書には,不動文字で,顧客は,販売業者等が顧客に対して取得した割賦販売代金債権を譲渡することを予め異議なく承諾する旨の条項が記載されている。
しかし,同書面には,当該ファクタリング方式与信業者が譲受人となることは明記されていない。
⑤ ファクタリング方式与信業者は,譲り受けた割賦販売代金債権について,顧客から支払いを受ける。
⑥ 上記の仕組み中で,ファクタリング与信業者のほかに,顧客の信用情報を調査するため,信用情報機関に加盟している他の与信業者が関与し,顧客の信用情報機関の登録情報を調査し,与信を可と判断することが,ファクタリング与信業者が割賦販売代金債権を買い受ける条件となっている場合がある。
あるいは,ファクタリング与信業者または同者から委託を受けたものが,顧客に対し,割賦販売契約の成立の有無やその適正を確認できたものを買い受ける条件とする場合もある。
いずれの条件も,クレジット会社が顧客の信用を調査したり,割賦販売契約について調査し,与信の適否を判断する場合と何ら異ならない。
(2)発生しているトラブル
上記の仕組みで債権譲渡された後,販売業者等と顧客との間でトラブルが生じて顧客が支払いを拒否すると,ファクタリング方式与信業者から請求を受ける。ファクタリング方式与信業者は,本件は個別信用購入あっせんではないので抗弁対抗や取消しは認められていないこと,また債権譲渡について「異議なき承諾」がされていることをもって,顧客の販売業者等に対して有する抗弁の主張を認めない。
(3)悪質業者を助長すること
ファクタリング方式与信業者は,自らを個別信用購入あっせんではないと考えており,また,予めした異議を留めない承諾の効果として,顧客が販売業者等に対して有するどのような抗弁を主張しようとも無関係だと考えているため,販売業者等の営業体制やその内容につき調査をするという考えに乏しい。
それ故,販売業者等は,登録を義務付けられている個別信用購入あっせん業者と加盟店契約を締結できないなどの事情があれば,調査・審査の緩いファクタリング方式与信業者を使うことになる。調査や審査が緩い結果,販売業者等の悪質商法の展開を許すことになる。

4 個別信用購入あっせん該当性
(1)このファクタリング方式与信業者の行為は,「カード等を利用することなく,特定の販売業者等が行う購入者への商品若しくは指定権利の販売又は特定の役務提供事業者が行う役務の提供を条件として,当該商品若しくは当該指定権利の代金又は当該役務の対価の全部又は一部に相当する金額の当該販売業者又は当該役務提供事業者への交付(当該販売業者又は当該役務提供事業者以外の者を通じた当該販売業者又は当該役務提供事業者への交付を含む。)をするとともに,当該購入者又は当該役務の提供を受ける者からあらかじめ定められた時期までに当該金額を受領すること(当該購入者又は当該役務の提供を受ける者が当該販売業者から商品若しくは指定権利を購入する契約を締結し,又は当該役務提供事業者から役務の提供を受ける契約を締結した時から二月を超えない範囲内においてあらかじめ定められた時期までに受領することを除く。)」にあたり,「個別信用購入あっせん」に該当する(割賦販売法第2条4項)。
(2)否定する意見
このファクタリング方式与信については,個別信用購入あっせん該当性を否定する意見がある。すなわち,個別信用購入あっせんでは通常,あっせん業者と顧客らとの間に個別信用購入あっせん関係受領契約(割賦販売法第35条の3の3第1項,同35条の3の4,同5条の3の7,同35条の3の10)が存在するところ,ファクタリング方式与信業者と顧客との間には,個別信用購入あっせん関係受領契約が締結されていないので,ファクタリング業者は,個別信用購入あっせん業者に該当しないとするもので,その主張に沿う裁判例(東京地方裁判所平成26年10月3日判例タイムス1413号279頁)もある。
(3)否定意見に対する反論
しかしながら,個別信用購入あっせん関係受領契約の存在は,割賦販売法第2条第4項の個別信用購入あっせんの定義には含まれておらず,ファクタリング方式与信業者が個別信用購入あっせん業者であることを何ら妨げるものではない。
また,もし,この個別信用購入あっせん関係受領契約の存在を要件としてしまうと,割賦販売法の適用を免れるために敢えてこの契約を結ばずにいる業者には規制が及ばないことになり,悪質商法に手を貸す与信を防止するという平成20年の法改正の目的が達成されない。
(4)小括
従って,上記のファクタリング方式与信業者は,割賦販売法の適用を受ける個別信用購入あっせん業者に該当し,個別信用購入あっせん業者登録簿に登録をしなければならず(同法第35条の3の23),同法が定める抗弁の接続を甘受し,様々な義務,たとえば加盟店調査義務(同法35条の3の5)なども負担することになる。

5 結論
悪質な販売業者等は,審査の厳しい登録した個別信用購入あっせん業者の加盟店となることを避け,法の規制外と考えているファクタリング方式与信業者を利用しようとし,また,ファクタリング方式与信業者も自らを法の規制外の存在と考えて,悪質な販売業者等と提携することにより個別信用購入あっせん業者では得られない高率の利益を得ることができる仕組みとなっている。
これらファクタリング与信方式について,速やかに実態調査をし,意見の趣旨のとおり,個別信用購入あっせんに該当することを確認され,しかるべき措置をとられたい。

                                                              以上

 

参考資料

その1
東京地方裁判所平成26年10月3日判決(判例タイムス1413号279頁)及び控訴審(東京高等裁判所平成26年(ネ)第5548号事件)において提出された資料

(関係図)

 

(一審で提出された資料)
①割賦販売契約書一式 債権譲渡会社-顧客
②債権譲渡基本契約書 A3-C3
③債権譲渡基本契約に関する覚書 A3-C3
(二審で提出された資料)
④業務委託契約書(保証会社による信用保証付)A3-C1
⑤覚書(保証会社との間の信用保証基本契約付)A3-C1
⑥業務委託契約書(保証委託契約付)       C1-B
⑦覚書(保証委託契約付)              C1-B
⑧信用保証基本契約書               A3-B

※ 債権譲受会社は、当初はC1、途中からC3に変更となった。C1とC3は、代表者、事務所所在地を同一とする会社。

 

その2
現在進行中の事件(債権譲受会社=D)

aファクタリング取引契約書
b覚書
c自社割賦加盟店申込書
d割賦販売契約書(販売会社用)
e契約実行明細書
f登記事項証明書(概要事項、債権個別事項)


2019/04/17更新



消費者委員会成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループ報告書案に対する意見(平成28年12月30日)


20161230・消費者委員会成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループ報告書案に対する意見

 

内閣府 消費者委員会

委員長 河 上 正 二  殿

平成28年12月30日

 

消費者委員会成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループ報告書案

に対する意見

 

クレジット・リース被害対策弁護団

団長  弁護士  瀬  戸  和  宏

 

当弁護団は、与信を伴う消費者被害を多数扱ってきた経験を踏まえ、平成28年12月27日開催の貴委員会・成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループ(以下、「貴WG」と言います。)にて配布された報告書案(以下「報告書案」と言います。)について、以下のとおり、意見を述べます。

なお、当弁護団の民法の成年年齢の引下げについての意見は別紙「民法の成年年齢を18歳に引下げることに反対する意見書」を参照してください。

 

1 報告書案の方向性について

当弁護団は、WGが多方面の関係者から丁寧にヒヤリングを重ねたうえで、若年者の消費者被害の実態を踏まえ、民法の成年年齢引下げに伴う望ましい対応策として、①消費者被害の防止・救済のための制度整備、②処分等の執行強化、③消費者教育の充実、④消費者被害対応の充実、⑤事業者の自主的取組の促進を掲げて論ずるという方向性を打ち出されたことを支持します。

民法の成年年齢を引下げにより18歳・19歳の若年者が未成年取消権を失えば消費者被害が拡大することは確実であり、また22歳くらいまでの若年者も知識や社会経験に乏しく判断能力が十分でないことから、これらの若年者に対する十分な保護施策が必要なことは明らかであり、報告書案がそのような視点に立った施策について具体的かつ詳細に論じていることに強く賛同するものです。

 

2 更に求められる制度整備について

当弁護団は、上記のとおり報告書案の方向性に賛同したうえで、若年者の与信を伴う消費者被害案件を数多く扱ってきた立場から、既に報告書案で掲げられている消費者契約法におけるいわゆるつけ込み型不法勧誘に対する取消権に併せて、更に実効的な被害の救済・防止のため、少なくとも以下の制度が必要であり、これらについても報告書に記載されるべきと考えます。

(1)特定商取引法について

① 行政処分の対象行為について

「若年成人の判断力の不足に乗じて契約を締結させる行為」を連鎖販売取引、訪問販売に限定することなく、他の取引類型(電話勧誘販売、特定継続的役務提供、業務提供誘引販売取引、訪問購入)において、指示対象行為及び行政処分対象行為とすること

② そのうえで、指示対象行為に違反して勧誘した契約について取消権を認めこと

③ クーリング・オフ期間を延長すること

 

(2)与信行為について

① クレジットの若年者に対する資力要件と審査の強化

調査を簡易あるいは不要とする場合の与信枠の制限

② 貸金の若年者に対する資力要件と審査の強化

調査を簡易あるいは不要とする場合の与信額の制限

なお、対象を消費者金融業者に限定するものではありません。

 

3 周知期間および施行時期について

(1)ところで、報告書案では、12月20日の貴WGで配布された報告書素案(以下「報告書素案」)にはなかった「はじめに」が追加され、報告書素案の第2・7の「改正民法施行に関する配慮」の項目が削除されました。

そして、「はじめに」において、①十分な消費者教育がされるまでの準備期間の確保と②消費者被害の防止・救済のためのその他の措置が実施されるために必要な期間の確保が掲げられる一方で、「制度整備」には「国民的コンセンサス」を得た上で検討が進められることを期待したいとし、特に消費者契約法および特定商取引法に関わる「制度整備」については「国民的コンセンサスが得られておらず、その点を踏まえて取り扱う必要がある。」とされています。

上記の報告書案の表現では、民法の成年年齢引き下げを前提としたうえで、それに対する対策としての「制度整備」を行うについて「国民的コンセンサス」が必要であるような表現になってしまっています。

(2)しかし、平成21年10月の法制審議会最終報告書(以下「最終報告書」)の内容からして、上記表現は本末転倒となっていると言わざるを得ません。

最終報告書は、民法の成年年齢を18歳に引き下げることを適当としながらも、「ただし、現時点で引下げを行うと、消費者被害の拡大など様々な問題が生じるおそれがあるため、引下げの法整備を行うには、若年者の自立を促すような施策や消費者被害の拡大のおそれ等の問題点の解決に資する施策が実現されることが必要である。」とし、「民法の定める成年年齢を18歳に引き下げる法整備を行う具体的時期については、関係施策の効果等の若年者を中心とする国民への浸透の程度やそれについての国民の意識を踏まえた、国会の判断に委ねるのが相当である。」としています。そして、最終報告書の文中でも消費者保護施策の充実の具体策として、判断力不足に乗じた取引についての取消権などが挙げられています。

要するに、最終報告書は、施策の実現を前提に、施策の効果の国民への浸透(国民の意識への浸透)を踏まえて、国会の判断により引下げを行うとしているのであり、施策についての「国民的コンセンサス」ではなく、施策が十分になされたので引き下げても良いという「国民的コンセンサス」が必要であると述べているのです。

世論調査を見ても、国民の多くは成年年齢引き下げについて賛成していない実情であり、成年年齢引下げを前提として、「制度整備」に「国民的コンセンサス」を必要とすることはまさに本末転倒だと考えます。

(3)以上からして、貴WGの報告書においては、①十分な消費者教育がされるまでの準備期間の確保と②消費者被害の防止・救済のためのその他の措置が実施されるために必要な期間の確保を前提とし、それを踏まえて成立後少なくとも5年間の周知期間を設けることが明記されるべきと考えます。

 

4 「若年成人」(18歳~22歳)の取扱について

なお、報告書案では、18歳~22歳までの若年者を「若年成人」として施策を提言することについても、「国民的コンセンサス」が得られていないためその点を踏まえて取り扱う必要があるとしています。

しかし、貴WGがこの間、若年者の消費者被害とその対策について関係者から広く丁寧に意見聴取をしてきた中で、成年年齢引下げにより新たに成年となってしまう18歳・19歳に限らず、22歳くらいまでの若年者も社会経験に乏しく判断能力が十分でないことは共通であり、施策の必要性が認識できたことは事実であり、貴重な社会的財産であると言えます。

従って、今回の貴WGの調査結果として報告書の中に施策の必要性を明記することは、何ら問題はなく、むしろ必要であると考えます。

 

5 結び

民法の成年年齢引下げは、我が国に長い年月に亘って広く深く根付いてきた社会的制度を変革するものであり、その変革についての弊害への対処は十二分に行われなければなりません。

若年者の消費者被害事件を直接目にしている当弁護団としては、引下げにより消費者被害が生じてから施策を検討しても遅いと考えており、そのためにもWGにおいて十分な施策を提言して頂くことを期待します。

以  上

 

添付書類

 平成28年11月1日付 当弁護団の

「民法の成年年齢を18歳に引き下げることに反対する意見書」


2019/04/17更新



民法の成年年齢を18歳に引き下げることに反対する意見書(平成28年11月1日)


20161101・民法の成年年齢を18歳に引き下げることに反対する意見書

 

               民法の成年年齢を18歳に引き下げることに反対する意見書

                                                  平成28年11月1日

                                           クレジット・リース被害対策弁護団

第1 意見の趣旨
民法の成年年齢を18歳に引き下げることに反対する。仮に引き下げを行うのであれば、18、19歳を含めた若者の消費者被害について、十分かつ迅速な被害回復を可能とする立法的対策を求める。

第2 意見の理由
1 民法の成年年齢の引き下げ
平成21年10月28日、法制審議会は、「民法の成年年齢引下げについての最終報告書」を採択し、民法の成年年齢を18歳に引き下げるのが適当であるとする答申を行った。しかし、その後しばらく、法改正の動きもなく推移していたが、平成27年6月17日,公職選挙法が改正され、選挙年齢が18歳に引き下げられたことを受けて、改めて民法の成年年齢についても引き下げの動きが出始め、早ければ平成29年通常国会に改正法案が提出される状況となっている。
しかしながら、現段階で民法の成年年齢を引き下げると、18、19歳の若者の消費者被害が増加することは明らかである。
当クレジット・リース被害対策弁護団*1 では、これまで、アクトジャパン事件(キャッチ・モデル・恋人商法)、エレメント事件(絵画レンタル事件)、サクラサイト被害など、数多くの若者の消費者被害を扱ってきた。最近では、主に20代の女性が被害に遭ったスカウト詐欺事件*2 について、特設の弁護団を設けて対応している。当弁護団は、これらの事件処理を行ってきた経験から、民法の成年年齢の引き下げに反対する。
以下、詳述する。

2 民法の成年年齢を引き下げることによる若者の消費者被害の増大
(1)18,19歳の若者が未成年者取消権を行使できなくなることの影響
ア 未成年者取消権の直接的効果
未成年者の法律行為は、法定代理人の同意がなければ原則として取り消すことができる(民法5条1項、2項)。未成年者が消費者被害に遭った場合にも、この未成年者取消権が被害回復の有効な手段であることは言うまでもない。
全国の消費生活センターには、未成年者の消費者被害に関する相談が、毎年3万件程寄せられている*3 。インターネットの通信販売やオンラインゲームなどの被害が主なものだが、多くは未成年者取消権を行使することで、迅速な被害回復が図られている。
民法の成年年齢を引き下げれば、18、19歳の若者がこのような被害にあった場合にも、未成年者取消権を行使することができない。このため、十分な被害回復が図れなかったり、被害回復に時間がかかったりして、18,19歳の若者である被害者に重い負担が課されることになる。
イ 未成年者取消権の抑止的効果
未成年者取消権は、未成年者の消費者被害を未然に防ぐ効果も有している。すなわち、未成年者取消権が存在するが故に、悪質業者は勧誘対象者が未成年者であることを確認すると契約をさせないのである。当弁護団の経験に照らせば、事実上、この未成年者取消権の抑止的効果こそが、未成年者を消費者被害から守る上で絶大な威力を発揮している。
実際に、当弁護団が取り扱っている上述のスカウト詐欺事件では、勧誘の際に「成年であること」を条件としたり、年齢を確認するなどして(後記参考事例1~4)、未成年者を勧誘対象から外している。また、勧誘時に未成年者(19歳)である者とは契約していない(同事例5)。
そして、その者が20歳になるのを見計らって、契約をさせているのである(同事例6~9)。
これらの事実から、18,19歳の若者も悪質業者からの勧誘を受けているが、未成年者取消権のおかげで彼らが被害に遭っていない(逆に言えば、20歳になった途端に被害に遭っている)という実態が明白である。
民法の成年年齢を引き下げれば、18、19歳の若者について、この抑止的効果が働かなくなり、これらの若者をターゲットとした消費者被害が増大することは明らかである。
(2)クレジットカードの利用等による被害
多くの若者は資力がないため、若者が消費者被害に遭う場合には、クレジットカード決済などの分割払いを利用したり、消費者金融等から借入をさせて代金を支払わせるものが多い。
このような被害において、業者が破綻するなどして悪質業者から被害を回復することができない場合には、被害者である若者に支払義務が残ってしまうこともある。
この点、現在は、18、19歳の若者がクレジットカードを作成したり借入をするには、親権者の同意が必要であり、容易にクレジットカードを作成したり借入をすることができない。
しかし、民法の成年年齢を引き下げれば、18、19歳の若者が容易にクレジットカードを作成したり、借入をすることができてしまう。そして、必ずしも十分な与信審査が行われているとはいえない現状に鑑みれば、クレジットカード決済や借入などにより、18、19歳の若者が本人の資力や収入に見合わない多額の被害に遭い、その支払義務を負ってしまう事例が増加することは明らかである。

3 若者の要保護性
未成年者が保護されるのは、社会経験に乏しく、判断能力が十分でないからである。当弁護団では、上記のように消費者被害に遭った20代前半の若者と接してきたが、彼らもまた契約の意味を十分に理解することなく、契約後に自らがいかなる義務を負うことになるのかについて考えを及ぼすことなく、安易に契約に応じて被害に遭っている。
確かに、若者の消費者被害を防ぐためには、成年も含む消費者全般についての保護法制の拡充や消費者教育が重要である。しかし、これらの対策は現時点で必ずしも十分とはいえない。一方で、インターネットや携帯電話、SNSなどの普及により、若者が接することができる情報量はこれまでと比較にならないくらい増加している。そして、これらを利用する悪質業者の手段はより複雑かつ巧妙になっており、若者が消費者被害に遭う危険性はますます増している。
特に、民法の成年年齢引き下げにより、新たに保護の対象から外される18,19歳の若者には高校生も含まれる。このような若年の若者が、消費者被害に遭っても成年と同じ解決手段しか与えられず、場合によってはこの若さで多額の負債を抱えることになりかねない。このような事態は、若者に経済的のみならず精神的にも大きな負担を与えることに鑑みれば、その若者の将来に与える影響は重大である。

4 まとめ
民主主義の観点から政治に参加する権利を拡大した公職選挙法の選挙年齢と、未成年者を消費者取引上保護する民法の成年年齢とを、一致させる必要性はない。
むしろ、18,19歳の若者をターゲットとした消費者被害の増加を招来することが必須であるにもかかわらず、民法の成年年齢を引き下げるべき理由はない。
したがって、当弁護団としては、民法の成年年齢の引き下げに反対する。また、仮に引き下げを行うのであれば、18、19歳を含めた若者の消費者被害について、十分かつ迅速な被害回復を可能とする立法的対策を求める。

以上

【脚注】
*1 クレジット・リース被害対策弁護団は、東京三弁護会に所属する弁護士で構成員され、与信問題に関係する事件に被害者側で扱っている弁護団である。平成17年に過剰与信被害対策弁護団として発足し、過剰与信規制に取り組んでいたが、平成20年の割賦販売法改正後、現在の名称に変更した。
*2 アルバイトに応募したり、街でモデル等にスカウトされた若い女性に対して、「無料でエステを受けられる」等と勧誘し、高額な化粧品や宝石をクレジットで契約させた事案。毎月、契約者の口座にはクレジットの返済分が振り込まれていたが、その後、販社より連絡を受けて、クレジットに対し中途解約の通知を出したところ、販社からの入金とクレジットの引き落としが停止した。被害者らは、これで終了したと思っていたが、債権を譲り受けたという事業者から集団提訴された。
弁護団が被害者の契約当時の年齢を把握している事案(196件)のうち,明確に年齢が判明しているものだけ見ても,20歳で被害に遭った者が47名,21歳は38名,22歳は16名である。また,被害者が少なくとも契約当時20歳~22歳であった事案は,123件を占める。
*3 独立行政法人国民生活センター編「消費生活年報(2014年)」

○参考事例
【事例1】 女性 平成元年1月生 契約時20歳・大学2年生
平成22年夏頃、大学の友人から、脱毛12回無料でできる無料体験モデルのようなものがあると聞き、興味を持った。
池袋のマンションの一室にあるエステに行き、「支払いは形式上してもらうけど、27日までに一旦引き落とし分を用意してもらって、引き落とされた後に、同額を返金する。」「やめたいときはいつでもやめられる。」などと勧誘された。被害者は、何故このような契約をするのか疑問に思ったので尋ねたところ、「エステというのは高額で、なかなか若い人が踏み込みにくいので、やってくれる人を探している。20歳以上で、未婚の女性。まずは無料で体験してもらって、そこからエステを使っていくきっかけにしてもらいたい。」などと説明を受けた。相談者は,友人が利用しているということもあって信頼してしまい、商品の売買契約と分割払いのクレジット契約を締結した。

【事例2】 女性 平成2年5月生 契約時21歳・大学3年
平成22年の夏頃、アルバイト先のスタッフから、「脱毛が無料で受けられるのだが興味はないか?20歳以上の人にしか紹介はできないが、知り合いが困っているので話だけでも聞きに行ってもらえないか?」と言われた。
同年12月7日、神田のマンションに行き、「脱毛を無料で受けられるが、そのためには美容化粧品を買う契約をする必要がある。しかし、費用はこちらで持つので一切の支払いはしなくてよい。割賦会社と契約するので銀行口座からの引き落としがあるが、引き落としがされた後にこちらから同額を振り込む。」などと説明され、化粧品100万円分の売買契約と分割払いのクレジット契約を締結した。

【事例3】 女性 平成2年6月生 契約時21歳・アルバイト
平成23年6月22日、SNSのトピック欄にエステが無料で受けられるという情報があり、クリックして、詳細を聞きたい旨のメッセージを送信した。すると、ある女性から返信があり、「全身脱毛などが4年間使い放題。途中でお金が発生したりなどは一切ありません。20歳以上の方で、一度池袋の会社に来て説明を受ける必要がある。」という内容であった。
同月24日、池袋の事務所に行き、そこに居た男性から、「無料でエステを受けられるが、美容品購入の契約をしてもらう必要がある。その代金はこちらから負担するので、お金がかかることはない。」という説明を受け、美容品の売買契約と分割払いのクレジット契約を締結した。

【事例4】 女性 平成元年12月生 契約時22歳・会社員
平成23年1月、渋谷でスカウトを受け、モデル事務所に登録した。事務所から届く仕事の紹介メールの中に、脱毛モニター募集といった内容の案件メールがあった。参加条件が20歳以上の女性だった為、参加の意思表示をした。
同年11月、神田のマンションに行き、「事務所から脱毛モニターと聞いた」と伝えると、脱毛モニターではなく美容品一式やダイヤモンドジュエリーを契約した特典として全身脱毛が受けられるという内容だった。「無料と聞いていた」と話をすると、「実際に契約は交わすが数ヶ月で解約手続きをする。数ヶ月は代金の引き落としがされるが、引き落とされた分は必ず返金をするから実質無料で脱毛ができる」と説明され、美容品と宝石100万円の売買契約と分割払いのクレジット契約を締結した。

【事例5】 女性 平成3年4月生 契約時20歳・大学3年
バイト先の上司から、「知り合いの営業の成績がよくないから、契約してほしい。契約してくれればお金はこちらが払う。途中でやめられるし,脱毛が無料でできる。」などと言われ、無料で脱毛を受けられるならと思って承諾した。
同じバイトをしていた高校時代の友人も勧誘されたが、当時19歳だったので、「誰か友達を紹介してくれたら,契約できないけど無料で脱毛受けていいよ。」と言われていた。

【事例6】 女性 平成2年4月生 契約時20歳・大学生
平成22年2月頃、新宿で友人と買物をしていたところ、20歳くらいの男性から「美容アンケートに答えて欲しい」などと声を掛けられ、雑居ビルの一室に入った。アンケートに答えると、別の女性が美容の悩みを聞いてくれ、「体質改善をしてくれるサプリを販売している。モニターとして、本来100万円するサプリを特別に20万円で販売する。」などと5、6時間に渡って勧誘され、契約することになった。しかし、当時19歳であったため、誕生日を迎えて20歳になったら再度来るように言われた。20歳になった4月に入ってから、契約書に押印するため再び雑居ビルを訪れ、総額約24万円のサプリ購入契約と月々9,900円24回分割払いのクレジット契約を締結させられた。

【事例7】 女性 平成3年11月生 契約時20歳・大学2年
平成23年の春ころ、脱毛に興味があったため、mixiのコミュニティで「無料エステ脱毛キャンペーン」という投稿をしていた女性にメールで詳細を尋ねた。すると、年齢を確認されたので19歳だと返信したところ、「未成年は利用できない」と言われて無料エステ・脱毛の利用を断られ、以後しばらくの間メールのやりとりはなくなった。しかし、平成23年11月12日に20歳になった直後の同月23日,再度「年内までなら,4年間無料でエステ脱毛に通えますし化粧品と美顔器をプレゼントしているのですがまだ興味ありますか?」というメッセージが送られてきた。
興味を持ったので、池袋の雑居ビルで話を聞くと、「無料のフェイシャルエステ・脱毛を受ける条件として、美容品をクレジットで購入する契約をする必要がある。ただし、クレジット会社からの引き落としに合わせて,私の銀行預金口座に引落と同額を入金するので、フェイシャルエステ・脱毛は事実上タダになる。」という説明を受けた。これを信じて、美容品一式について月々17,400円48回分割払いのクレジット契約を締結させられた。

【事例8】 男性 平成4年2月生 当時20歳・大学2年
平成24年1月ころ、大学のバスケットボール部の友人から、バスケ部の先輩の友人の販売業績をあげたいので協力してもらえないかともちかけられた。もっとも、被害者は、当時まだ19歳で、2月1日が20歳の誕生日だったので、契約は誕生日が過ぎてからと言われた。
そして、平成24年2月7日、居酒屋でバスケ部の先輩の友人に会い、「毎月の引落があるが、同じ口座に引落になる前にお金を入れておくから何の負担もかけない。何か月か経って解約という形にすれば大丈夫。協力してくれたら、対価として3万円を支払う」といわれた。このため、被害者は、商品の売買契約と分割払いのクレジット契約をした。

【事例9】 女性 平成3年1月生 契約時20歳・専門学校生
友達から「エステ・脱毛が無料で受けられる」という話を聞き、池袋の雑居ビルに行った。そこに居た男性から「美顔器や化粧品の契約をしてくれたら、オプションとしてエステや脱毛が無料で受けられる。引き落としがされる前に、俺が毎月決まった金額を振り込むから、無料になる。友達もやっているし、心配ないから大丈夫」と言われた。これを信じて契約することにしたが、契約書は男性の指示通りに書いた。当時学生であったが、勤務先や年収についても言われるがままに書いた。しかし、書類を書いている途中で、男性は被害者がまだ19歳であることに気づき、「今日は仮契約ということで、20歳になったときに、正式な契約にしておくよ」と言った。
おそらく誕生日を迎えた後、契約書の記載にミスがあったと事務の女性から連絡があり、最寄り駅で訂正箇所に押印させられた。

以上

 

(平成28年11月1日掲載)


2019/04/17更新